ROV

ROV（遠隔操作型無人潜水機）

ROV（Remotely Operated Vehicle）は、遠隔から操作が可能な無人の潜水機器であり、様々な研究や救助活動に活用されています。これらの機器は海洋研究開発機構をはじめとする多くのメーカーによって製造されており、形式や機能が多様です。例えば、三井造船の小型有索式水中ロボットや、キューアイの水中テレビロボットなどが存在します。また、ROVは一般的に、スタンドアローンで自律的に動作できるAUV（Autonomous Underwater Vehicle）とは異なり、主に水上の母船や有人潜水艇から操作されますが、近年では両者の機能を併せ持つハイブリッド型の製品も登場しています。

水中での運用においては、電波の到達距離が制限されるため、ROVは主に有線で映像を送信します。有線通信のタイプには、母船から直接動力を供給されるものと、内部バッテリーで電力を供給し情報のみを有線で送信する形式があります。後者の方式はケーブルが細く、運動性が向上しますが、運用時間には限界があります。ROVには、ソナーやマニピュレータなどの機能が搭載され、特定の目的に応じた拡張機器を追加することができます。大部分のROVはビデオカメラと照明を備えており、機器の能力向上が期待されます。

ROVの歴史は1965年にさかのぼります。この年、アメリカ海軍は機雷掃海や海底に沈んだ物資の回収を目的にCURV（Cable-controlled Undersea Recover Vehicle）を開発しました。このCURVはその後、スペインでの水素爆弾墜落事故において、沈下から81日後に回収に成功を収めます。この事件を契機に、石油やガス産業ではROVを用いて大陸棚における資源開発が進められるようになり、その後も深海事故における乗員救助や多くの海底開発に使用されていきました。

1980年代後半になると、原油価格の下落に伴い、ROVはさらに多様な用途に応じて利用されるようになります。単なる海洋構造物の点検にとどまらず、パイプラインの接続や水中の設備設置などにも広がりました。また、海中の歴史的な沈没船の調査にも頻繁に使用されており、タイタニック号やビスマルク号など、名だたる沈没船の調査に貢献しています。

2010年代以降、多くの企業から小型で高性能なROVが登場し、それらは産業用途や趣味・娯楽向けに利用され始めました。コストが下がり、さまざまな種類のROVが市場に出回っているほか、小型ROVの開発が海洋および水産資源ビジネスにおいても期待されています。

ROVの製造過程では、軽量性や安定性を考慮し、主要な構造物はアルミニウム製でシャーシにも浮力材が使用されています。推進器やセンサーが取り付けられ、水中での作業を行うために必要な剛性を確保しています。一方で、ROVの種類に応じては異なる設計や製造方法が採用されることもあります。

さらに、ROVは軍事関連でも重要な役割を果たしています。1970年代には既に対機雷戦に利用されており、各国が様々な機種を開発してきました。特に日本のS-10は機雷探知機能を持ちます。自然災害時にもROVは生存者や遺体捜索に使用されており、日本では2011年の東日本大震災をはじめとして幸いにもROVの力で多くの情報と救助活動が行われています。これらの活動はROVの重要性を再認識させるものとなり、その活用は将来的にも広がりを見せるでしょう。

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