RS-27

RS-27 ロケットエンジン

RS-27は、1971年にロケットダイン社が開発した液体燃料ロケットエンジンです。デルタロケットシリーズ、特にデルタ2000からデルタ6000までの第一段推進機として設計・運用されました。このエンジンは燃料にRP-1（ケロシン）を、酸化剤に液体酸素（LOX）を用い、燃焼室内で高圧燃焼させることで、1023キロニュートン（kN）の推力を生み出す能力を持っています。

本エンジンの開発は、それまでミサイルなどで使用されていたMB-3シリーズ、とりわけ最終改良型であるMB-3-3を代替することを目的として進められました。RS-27は1972年に実運用が開始されて以来、1990年までの約18年間にわたり、デルタロケットの主力エンジンとして活躍しました。この期間中、合計108回の打ち上げにおいて信頼性の高い性能を示しました。

デルタロケットの世代交代に伴い、RS-27も改良が施されました。デルタ7000シリーズに搭載されたタイプは、効率性能の向上などを実現し、「RS-27A」として区別されています。さらに、2000年頃までRS-27Aと並行して使用された「RS-27C」は、推力がさらに高められたモデルであり、RS-27ファミリーはデルタロケットの性能向上に貢献し続けました。

RS-27エンジンの特徴的な構成として、中心的な主エンジン本体に加えて、姿勢制御を担う小型の補助ロケット（バーニアエンジン）が11基取り付けられています。主エンジンとこれらのバーニアエンジンは、飛行中に機体を回転させたり、進行方向を微調整したりするために、ジンバル機構（推力方向を変化させるためのヒンジ状の懸架構造）によって吊り下げられています。

エンジンの動作サイクルは、推進剤の一部を燃焼させてターボポンプを駆動するガス発生器サイクルを採用しています。液体酸素を供給するターボポンプは、最大運転時に毎分7085回転という高速で回転し、約1900キロワット（kW）もの大きな動力を発揮します。燃料であるRP-1を供給するターボポンプは液体酸素用と同軸に配置されており、同じ回転速度（7085 rpm）で駆動し、約1289 kWの出力を生み出します。これらの強力なターボポンプによって、毎秒約250キログラムの液体酸素と、毎秒約111キログラムのRP-1が効率的に燃焼室へ圧送されます。

燃焼室内では、推進剤の化学反応により極めて高温・高圧の状態となります。燃焼温度は3,315℃に達し、燃焼圧力は約4.8メガパスカル（MPa）にもなります。このような過酷な環境下での連続運転に耐えるため、燃焼室やノズル部には特殊な耐熱鋼が用いられています。また、エンジン効率の維持と構造材の保護のため、冷却方式には再生冷却が採用されています。これは、燃焼室やノズルの壁面に設けられた流路に、燃焼前のRP-1燃料を循環させることで壁面を冷却し、同時に燃料自身を予熱するという仕組みです。

RS-27は、堅実な設計と長年にわたる豊富な運用実績により、デルタロケットによる数多くの衛星打ち上げや宇宙探査ミッションの成功を支えた、信頼性の高いロケットエンジンとして位置づけられます。

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