ケロシン

ケロシンの概要

ケロシン（英語: kerosene）は、石油の分留成分の一つで、主に家庭用の灯油や航空機のジェット燃料、ロケット燃料として利用されている。具体的には、ケロシンは沸点150℃から280℃、炭素数10から15の範囲に位置する無色で可燃性の液体である。その密度は約0.79から0.83で、ナフサよりも重く、軽油よりも軽い特徴を持つ。

ギリシア語の「κηρός」（keros、ろう）に由来するケロシンの名称は、主に世界中で多様な呼称が用いられている。英語では「kerosene」や「kerosine」、また「coal oil」とも呼ばれ、中国語では「煤油」や「火水」という言葉が使われている。特に日本では、一般的にケロシンというとジェット燃料やロケット燃料を指すことが多い。たとえば、モービル石油やコストコの給油機にも「Kerosine」との表示が見られる。英国や南アフリカでは「paraffin」として知られている。

ケロシンの性質

ケロシンは無色の燃えやすい液体であり、主に石油の分留により得られ、150℃から275℃の範囲の沸点を持つ。特に、かつては灯油ランプの燃料として利用されていたが、今では家庭向けの灯油や航空機のジェット燃料、さらにはロケットエンジンの燃料としても使用されている。ケロシンの製造過程では、通常、原油からの蒸留処理が行われ、さらに硫黄の含有量が減少するように脱硫処理が実施されることが多い。また、最近では石油クラッキングによってもケロシンが生産されており、重油などの価値の低い成分から価値の高いケロシンが生成されることもある。

引火点は37℃から65℃、発火点は220℃であり、これによって取り扱い時の注意が必要とされる。

ケロシンの用途

灯油

家庭用燃料としての灯油は、日本で非常に普及している。家庭用灯油ストーブは冬季の暖房として広く利用されており、品質に関してはJIS K 2203で標準化されている。精製度が低い灯油は主に発展途上国で調理用に用いられるが、日本では高品質のものが広く入手可能である。

ジェット燃料

航空機用燃料は主にケロシンから生成される。代表的なものとしては、一般的なケロシン系燃料のJet A、Jet A-1やワイドカット系のJet Bがある。これらはアメリカで確立された規格ASTM D-1655に基づいており、日本においてもJIS K 2209が適用されている。

ロケット燃料

ロケットエンジンは、ケロシンや液体水素などを燃料として使用し、酸化剤と組み合わせて使用される。過去には、過酸化水素や液体酸素などが酸化剤として使われており、最近では液体酸素が多く用いられている。ケロシンはその特性から多段式ロケットの1段目の燃料として選ばれることが多く、サイズが大きくなるのを抑える利点がある。

ケロシン系ロケット燃料の例

ケロシン系のロケット燃料には、アメリカのRP-1や旧ソビエト連邦のRG-1、TM-114などがある。また、有名なロケットエンジンの例としては、アポロ計画で使用されたF-1エンジンや、ロシア製のRD-170/RD-171エンジンなどが存在する。

世界の呼称

ケロシンという言葉は多くの言語で異なる呼称を持っており、地域により異なる便名として使用されている。アメリカではkerosene、フランスではkérosène、ロシアではКеросин（Kerosin）などがあり、国や文化によってその使用法や認識が異なることを示している。

こうした多様な特性を持つケロシンは、今日の工業や家庭の中で重要な役割を果たし続けている。

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