RS-82 (ロケット弾)

RS-82およびRS-132ロケット弾

RS-82（ロシア語：РС-82）およびその大型版であるRS-132は、第二次世界大戦中にソビエト連邦で開発・使用された主要な無誘導ロケット弾です。これらのロケット弾は主に航空機から発射され、敵航空機や地上目標への攻撃に用いられました。制式名称の「RS」は「リアクティヴヌイ・スナリャート（Реактивный Снаряд）」、すなわち「ロケット弾」を意味しています。

開発経緯

RS-82とRS-132の開発は、1930年代初頭にゲオルギー・ランゲマクが率いるチームによって始まりました。ロケット弾の直径が82mmと132mmに決定された背景には、当時の標準的な無煙火薬炸薬（直径24mm）を束ねた際のサイズが考慮されたという説があります。7本の炸薬を束ねるとおよそ82mmになったため、この直径が選ばれました。最初の試射は1929年11月に行われ、その後、航空機に搭載するためのRO-82レール型発射機が1937年に設計されました。

実戦での初登場と運用

これらのロケット弾が初めて実戦で使用されたのは、1939年8月20日に発生したノモンハン事件の最中でした。ソ連軍のI-16戦闘機5機が、日本の戦闘機に対してRS-82を発射し、記録によると2機を撃墜したとされています。これは、軍事行動において航空機からロケット弾が発射された史上初の事例とされています。また、ソ連・フィンランド間の冬戦争でも、RS-132を装備したSB爆撃機6機が投入されました。これらの実績を経て、RS-82とRS-132は1940年にソ連軍の制式装備となりました。

第二次世界大戦中のソ連のほとんどの軍用機は、これらのロケット弾を搭載できるように設計されていました。時には戦場で即席で作られた発射機も使用されました。特に、対地攻撃機として有名なイリューシンIl-2には、前線での改造により最大24発のロケット弾を搭載できる仕様も存在しましたが、空気抵抗と重量が増加しすぎたため、実用性は限定的でした。

性能と課題

RS-82およびRS-132を含む初期の無誘導ロケット弾は、共通して命中精度の低さという課題を抱えていました。RS-82の初期の試射データによると、射距離500mで目標の戦車に命中したのは186発中わずか2発でした。戦車の隊列を目標とした場合でも命中率は3.7%に過ぎませんでした。大型のRS-132はさらに精度が低く、あるテストでは134発全てが外れたという結果も出ています。実戦では通常より遠距離で発射されることが多く、命中率はさらに低下する傾向にありました。特に、装甲目標を効果的に破壊するには直撃が必要であり、至近弾では十分なダメージを与えられないことが、命中精度の問題をより深刻なものとしました。一方で、広範囲に散布する性質は、巨大な集積された地上目標に対する面制圧射撃においては一定の効果を発揮しました。

派生型と「カチューシャ」への発展

RSシリーズからは、いくつかの派生型が生まれました。

RS-82 / RS-132: 標準的な榴弾頭を装備した型です。
RBS-82 / RBS-132: 徹甲弾頭を装備し、装甲目標への攻撃能力を高めた型です。
ROFS-132: 破片効果弾頭を採用し、対人・対非装甲目標への効果を高めた型です。
M-8: RS-82を元に、弾頭とロケットモーターを大型化（炸薬量0.64kg）した地対地攻撃用ロケット弾です。BM-8カチューシャ多連装ロケット砲で使用されました。
* M-13: RS-132を元に、弾頭とロケットモーターを大型化（炸薬量4.9kg）した地対地攻撃用ロケット弾です。BM-13カチューシャ多連装ロケット砲で主に使用されたほか、一部のIl-2にも搭載されました。

これらの派生型、特にM-8とM-13は、第二次世界大戦中にソ連軍の主力地対地ロケット兵器である「カチューシャ」の基盤となり、その後のロケット兵器開発に大きな影響を与えました。

諸元

以下に、RS-82とRS-132の主な諸元を示します。

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