RSX-11

RSX-11：リアルタイムOSの歴史

RSX-11は、ディジタル・イクイップメント・コーポレーション（DEC）が開発したPDP-11シリーズ向けのリアルタイムオペレーティングシステムファミリです。1970年代後半から1980年代前半にかけて、そのリアルタイム性能からプロセス制御分野で広く利用されましたが、プログラム開発環境としても重宝されました。1972年にリリースされたRSX-11Dが最初のバージョンです。

RSX-11の誕生と進化

RSX-11のルーツは、PDP-15向けに開発されたRSX-15に遡ります。当初はDEX-15と呼ばれていたこのシステムは、後にRSX（Real-Time System Executive）という名称が与えられました。その後、Resource Sharing Executiveへと名称が変更されています。

1972年から1976年にかけて、Garth Wolfendale氏がプロジェクトリーダーとしてRSX-11Dの開発を指揮しました。この間には、22ビットアドレッシングをサポートしたPDP-11/70への対応も行われています。Wolfendale氏はイギリス出身であり、イギリスでIASの設計・開発チームを立ち上げ、タイムシェアリング機能をRSX-11に導入しました。

その後、David Cutler氏がRSX-11Dをより小型のマシンでも動作するようにしたRSX-11Mの開発を主導しました。RSX-11Mで導入された技術は、後のVMSにも採用されています。また、マイクロソフトのWindows NTは、概念的にはRSX-11Mの子孫と言えますが、より直接的には、Cutler氏がRISCプロセッサ（PRISM）用に開発したOSがベースとなっています（このOSはリリースされませんでした）。

開発者、Dave Cutlerの言葉

「私の最初のOSプロジェクトは、16ビットのPDP-11シリーズで動作するRSX-11Mというリアルタイムシステムでした。…32KBのメモリで動作するマルチタスクOSで、階層型ファイルシステム、アプリケーションのスワッピング、リアルタイム・スケジューリング、開発ユーティリティを備えていました。このOSとユーティリティは、非常に小さいシステムからPDP-11/70のように4MBのメモリを搭載したシステムまで、PDP-11の全機種で動作しました。」

RSX-11の多様なバージョン

RSX-11には様々なバージョンが存在します。以下に主なバージョンをまとめます。

RSX-11A, C: 小型紙テープベースのバージョンです。
RSX-11B: RSX-11CにディスクI/O機能を追加したバージョンで、DOS-11を経由して起動します。
RSX-11D: マルチユーザーディスクベースのOSで、IASへと進化しました。
IAS: タイムシェアリング機能を強化したRSX-11Dで、DCL（DIGITALコマンド言語）を初めて導入しました。
RSX-11M: マルチユーザー版です。
RSX-11S: RSX-11Mのメモリ常駐版で、組み込みシステムで採用されました。
RSX-11M-Plus: RSX-11Mの拡張版で、マルチプロセッサのPDP-11/74をサポートする予定でしたが、その機種はリリースされませんでした。
RSX-20F: RSX-11Mをベースに、PDP-11/40をPDP-10のフロントエンドプロセッサとして利用する際に使われたOSです。
Micro/RSX: MicroPDP-11向けにプリインストールされたRSX-11M-Plusで、インストールは容易ですがカーネル再作成はできません。
P/OS: PDP-11ベースのパーソナルコンピュータ、DEC Professional向けに改造されたRSX-11M-Plusです。

ソ連でのクローン版

ソビエト連邦では、RSX-11MのクローンであるDOS/RV (ОСРВ-СМ) が開発されました。これはRSX-11Mのバイナリを直接修正したもので、プロンプトの変更のみで動作したとされています。RSX-11Mのソースコードがシステム生成に使用されていたため、複製は容易でした。

ОСРВはロシア語で「リアルタイムオペレーティングシステム」を意味し、'OCPBCM'という6文字は16ビットRADIX-50ワードに収まるため、'RSX11M' と同様に扱われました。名称の残りのСМは「小型電子計算機システム」を意味し、PDP-11互換の「СМ ЭВМ」というマシンで動作しました。ただし、ハードウェアのわずかな違いから、RSX-11のバグをソ連の技術者が独自に修正したため、両者には差異がありました。

RSX-11の詳細な機能

RSX-11はリアルタイムOSとして、外部からの入力に規定時間内に応答する機能が備わっており、タスクの優先度設定やメモリへのロック機能がありました。仮想アドレス空間が64KBと小さかったため、洗練された半自動オーバーレイシステムを使用し、taskbuilder (TKB) というプログラムでプログラムのオーバーレイを生成していました。

RSXのプロンプトはDCL導入前は「>」または「MCR>」でした。コマンドは先頭3文字に短縮されており、例えば「HELLO」コマンドはログイン時以外は「HELP」コマンドと区別するため短縮できませんでした。

関連事項

RSTS/E
RT-11

外部リンク

* Al Kossow posted some further notes on RSX-11 in alt.sys.pdp11.

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