Raised On Radio〜時を駆けて

アルバム『Raised On Radio』〜時を駆けて

ジャーニーの『Raised On Radio』は、1986年に発表されたアルバムであり、この作品がバンドの活動の幕を下ろすことになりました。ジャーニーは1980年代初頭から中盤にかけて、アルバム『エスケイプ』や『フロンティアーズ』といったメガヒットを連発し、アメリカの音楽シーンにおいてトップバンドの一角を占める存在へと成長していました。しかし、成功を収めた反面、内外の様々な問題が浮上し、メンバー間の緊張が高まっていたのです。

1984年には、リーダーのスティーヴ・ペリーがドラマーのスティーヴ・スミスを解雇したという噂が広まりました。これは、ロック評論家の伊藤政則が「スティーヴ・スミスは巧すぎてジャーニーをクビになった」とコメントしたことから起きた事象です。こうした噂はバンド内での緊張感を更に高めました。結局、スティーヴ・スミスと元メンバーのロス・ヴァロリーはアルバム制作には関与しないものの、ツアーには参加するという形になりました。このアルバムは、実際にはスティーヴ・ペリー、ニール・ショーン、ジョナサン・ケインの3人によって制作されました。

本作『Raised On Radio』は、タイトルからもわかるようにアメリカのラジオ文化への想いが込められています。当時はMTVが中心となり、ビデオクリップの流行が音楽業界に大きな影響を与えていたため、バンドのメンバーが成長してきた音楽環境とは大きく異なっていました。このような背景からも、彼らの原点を振り返る意味合いを持った作品として解釈されることが多いです。

アルバムの制作においては、過去のプロデューサーであるマイク・ストーンがバンドを離れ、代わりにスティーヴ・ペリーが新たにプロデューサーを兼任する形となりました。エンジニアにはジム・ケインズが名前を連ね、ミックスはボブ・クリアマウンテンが担当しました。これにより、ジャーニーらしいコズミックなサウンドは新たな方向性を見出し、メロディ重視のロックスタイルへとシフトしていきました。例えとして挙げると、シンセチェンバロやサックスなど、ジャーニーのこれまでのスタイルにはなかった楽器が使われており、個性的な演奏が幅広い曲調の中に溶け込んでいます。

『Raised On Radio』はビルボード・チャートで第4位に輝くヒットを記録しましたが、リリース時には解散の噂が絶えませんでした。ツアーは1986年8月に始まり、1987年2月まで続きましたが、その後バンドは活動を停止することが決定しました。メンバーたちは各自のソロ活動を本格的に始めていく中、脱退したロス・ヴァロリーは音楽界から退き、スティーヴ・スミスは元のジャズ/フュージョンの道に戻ることとなったのです。

さらに、アルバムは元シン・リジィのフィル・ライノットに捧げられています。収録曲には「ガール・キャント・ヘルプ・イット」、「ポジティヴ・タッチ」、および「アイ・ビー・オールライト」などが含まれ、いずれもビルボードシングルチャートでの高順位を記録しています。この作品は、ジャーニーの音楽の集大成といえるものであり、彼らの歴史の重要な一ページを刻んでいます。

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