Rec. 601

ITU-R勧告BT.601：デジタルビデオの基礎規格

ITU-R勧告BT.601（Rec. 601、またはBT.601、旧称CCIR 601）は、アナログビデオ信号をデジタル形式に変換するための国際的な規格です。1982年、国際無線通信諮問委員会（CCIR、後に国際電気通信連合無線通信部門に改名）によって策定されました。この規格は、放送や映像制作において長年にわたってデジタルビデオの基礎として活用され、現代のビデオ技術に多大な影響を与えています。

Rec. 601の主要な特徴

インターレース方式のサポート: Rec. 601は、インターレース方式で撮影されたアナログビデオ信号のデジタル化を規定しています。インターレース方式とは、1フレームの映像を奇数ラインと偶数ラインに分けて順次表示する方式です。
ライン数とフレームレート: 525ライン（60Hz、NTSC方式）と625ライン（50Hz、PAL/SECAM方式）の両システムに対応しています。各ラインには、輝度信号720サンプルと色差信号360サンプルが含まれます。
色空間とサンプリング: YCbCr 4:2:2という色空間を用いています。Yは輝度信号、CbとCrは色差信号を表し、4:2:2は色差信号のサンプリング方法を示しています。輝度信号に対して色差信号が水平方向に半分の解像度でサンプリングされることを意味します。これは、人間の視覚特性を考慮した効率的なサンプリング方法です。
量子化: 輝度と色差信号は、8ビットまたは10ビットのPCM（Pulse Code Modulation）で量子化されます。8ビットの場合、黒レベルは16、白レベルは235と定義され、残りのコード値はヘッドルームとフットルームとして使用されます。これは、信号処理におけるオーバーシュートやアンダーシュートに対応するためです。
* 伝達特性: Rec. 601では、非線形なガンマ補正を適用した伝達特性が定義されています。これは、人間の視覚特性に合わせたもので、暗い部分の階調を細かく、明るい部分の階調を粗く表現する効果があります。

Rec. 601の影響と発展

Rec. 601で規定されたビデオラスター形式は、MPEGやH.26xといった様々なビデオ圧縮規格で再利用されています。しかし、民生用機器では、Rec. 601の4:2:2サンプリングよりも圧縮効率の高い4:2:0サンプリングが広く使用されるようになりました。

Rec. 601は、2011年3月にBT.607-7として改定されています。この改定では、いくつかの技術的な詳細が更新されていますが、基本的な構成は維持されています。

関連規格

Rec. 601は、高精細度テレビジョン（HDTV）に対応するRec. 709や、超高精細度テレビジョン（UHDTV）に対応するRec. 2020といった、後続の規格へとつながる重要な規格です。Rec. 656はRec. 601ビデオのデジタル伝送方法を規定しています。

まとめ

Rec. 601は、デジタルビデオ技術の基礎を築いた重要な規格です。そのシンプルさと汎用性から、長年にわたって映像制作や放送において広く利用されてきました。現代のビデオ技術はRec. 601を基盤として発展しており、その功績は無視できません。ただし、Rec. 601は標準解像度の規格であるため、現在ではより高精細な規格が主流となっています。それでもなお、Rec. 601はデジタルビデオ技術の歴史において重要な役割を果たした規格として記憶されています。 CCIRは、Rec. 601の開発に対し、1982-83テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞しました。

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