Rec. 2020

ITU-R勧告BT.2020 (Rec.2020) の解説

ITU-R勧告BT.2020、一般的にRec.2020またはBT.2020として知られるこの規格は、標準ダイナミックレンジ（SDR）の超高精細テレビジョン（UHDTV）における様々な技術仕様を包括的に規定しています。2012年の初版以降、改訂を重ね、4K/8Kといった高解像度映像、広色域（WCG）、高フレームレート、そして10ビットまたは12ビットの深みのある色表現といった、現代の高画質映像制作に不可欠な要素を網羅しています。

技術仕様の詳細

解像度: Rec.2020は、3840×2160ピクセル（4K）と7680×4320ピクセル（8K）の2つの解像度を標準として定義しています。どちらもアスペクト比16:9、正方画素を採用しています。

フレームレート: サポートされるフレームレートは、120p、119.88p、100p、60p、59.94p、50p、30p、29.97p、25p、24p、23.976pと多岐に渡り、プログレッシブスキャンのみが許容されています。

デジタル表現 (ビット深度): Rec.2020は、サンプルあたり10ビットと12ビットの2種類のビット深度を規定しています。10ビットの場合、コード64が黒レベル、コード940が公称白ピークとして定義され、それ以外のコードは黒レベル以下、または白ピーク以上の信号を表します。12ビットの場合も同様の構造を持ちますが、黒レベルと白ピークを表すコード値が異なります。

色空間 (システム色度): Rec.2020の色空間は、Rec.709 (HDTV)では表現できない広い色域をカバーします。これは、赤（630nm）、緑（532nm）、青（467nm）の3原[[色]]を、CIE 1931色度図上の特定の単色光源に厳密に定義することで実現されています。Rec.2020の色空間のカバー率は、CIE 1931色空間において約75.8％に達し、Rec.709(約35.9%)を大きく上回ります。

開発においては、実在する色を基に色空間を構築することで、変換回路なしでディスプレイに表示可能とする設計思想が採用されています。色域の拡大に伴い色間の差が大きくなるため、Rec.709と同等以上の表示精度を確保するため、ビット深度の増加が必要となりました。NHKによる研究では、Rec.2020色空間においてサンプルあたり12ビットが、人間の視覚の限界を考慮した上で適切なビット深度であると結論付けられています。

伝達特性: Rec.2020は、Rec.709と同様の非線形伝達関数を用いていますが、12ビットシステムにおいてはより高い精度のパラメータが用いられています。この伝達関数は、光強度(E)と非線形信号(E')の関係を数式で定義し、実際にはαとβという2つの係数で調整されます。これらの係数は、暗部と明部での滑らかな接続を確保するために、慎重に選択されています。実用上は、10ビットシステムではα=1.099、β=0.018、12ビットシステムではα=1.0993、β=0.0181といった値が使用されます。ただし、多くの制作現場では、ITU-R BT.2035勧告で規定されているリファレンスモニターを用いることが推奨されています。

RGBおよび輝度色差形式: Rec.2020は、フル解像度の4:4:4サンプリングのRGB信号に加え、4:2:2や4:2:0といったクロマサブサンプリングを用いた輝度色差信号（YCbCr、ICTCP）もサポートします。YCbCrは既存システムとの互換性を重視し、ICTCPは輝度情報の正確性を重視した方式です。

実装と関連技術

Rec.2020は、HDMI 2.0、H.264/AVC、H.265/HEVCといった様々な機器やコーデックでサポートされており、4K/8K UHDTVの普及に大きく貢献しています。また、量子ドット技術やレーザーバックライト技術といったディスプレイ技術の進歩も、Rec.2020色空間の再現性を向上させています。

Rec. 2100との関係

Rec.2100は、ハイダイナミックレンジ（HDR）映像のためのITU-R勧告で、Rec.2020と同一の原[[色]]色度点を使用しますが、HDR用に異なる伝達関数を用いています。

まとめ

Rec.2020は、高画質映像を実現するための基盤となる重要な規格です。その詳細な仕様と、関連技術の進歩は、4K/8K UHDTVの普及と映像表現の高度化を支えています。

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