Recordは、
スウェーデンのPropellerhead Software社が開発した音楽制作
ソフトウェアです。一般的にはデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)に分類されますが、開発元は「DAWとは呼ばないでほしい」としています。2010年にはイギリスの音楽メディアMusicRadarによって「DAW of the year」に選ばれるなど、高い評価を得ていましたが、2011年に姉妹
ソフトウェアである『Reason』のバージョン6に完全吸収されました。
特徴
Recordは、「ミュージシャンの視点に立ったレコーディングソフト」というコンセプトのもと、一般的なDAWが「エンジニア寄り」であるのに対し、音楽制作に特化した機能を提供しています。ユーザーインターフェースは、実際のスタジオ機材を模したデザインを採用しており、直感的な操作が可能です。
主要な3つのセクション
Recordは、以下の3つの主要セクションで構成されています。
1.
メインミキサー: 複数のトラックの音量バランスや音質を調整する
ミキシングを行うセクションです。SSL 9000Kアナログコンソールのレイアウトとサウンドを再現しており、本格的な
ミキシングが可能です。
2.
ラック:
エフェクターや音源などのデバイスを格納するセクションです。ケーブルを自由に接続することで、音の流れを視覚的に把握しながら、複雑なルーティングを構築できます。
3.
シーケンサ: オーディオ、
MIDI、オートメーションを記録するセクションです。内蔵機能のコントロールに特化しており、外部音源への
MIDI出力には対応していません。
独自の制作支援機能
Recordには、音楽制作を効率化するための様々な機能が搭載されています。
チューニング・メーター機能: 音程のずれを視覚的に確認できます。
コンプ機能: マルチテイクから最適なテイクを選び、編集できます。
タイムストレッチ機能: テンポを変更しても、録音済みのオーディオクリップの長さを自動的に調整できます。
ReGroove Mixer機能:
MIDIシーケンスのリズム的な特徴(
グルーヴ)を調整できます。
ブロック機能: 楽曲構成(イントロ、Aメロ、Bメロ、サビなど)をブロックとしてテンプレート化し、楽曲の構成を簡単に変更できます。
Recordは、VSTやAudio Unitといった汎用プラグインモジュール方式を採用していません。すべての機能が単体アプリケーションに統合されており、完結した制作環境を提供します。ただし、ReWireに対応したDAWとの同期が可能で、スレーブとして他のDAWと連携し、オーディオ信号をルーティングすることもできます。
ラックのデバイス
Recordには、様々な仮想デバイスが内蔵されています。また、同社のReasonをインストールすることで、Reasonのデバイスも使用可能です。
Recordバージョン1.5の内蔵デバイス例
ID-8マルチ音源
Neptuneピッチ補正デバイス
Line 6アンプシミュレーター
Line 6 PODシリーズとの互換性
Recordの「Line 6アンプ」デバイスは、Line 6社製のアンプシミュレーター『POD』シリーズと互換性があります。正規ユーザー登録することで、PODシリーズのアンプ/キャビネットがRecord内で使用可能になります。
互換性のあるモデル
POD Studio
GuitarPort xt
TonePort
POD xt
POD X3
POD Farm
バージョン履歴
Record 1.0(2009年9月9日)
主な特徴:メインミキサー、ID-8マルチ音源、Line 6ギター/ベースアンプ、自動タイムストレッチなど
Record 1.5(2010年8月25日)
主な特徴:Neptune、ブロックなど
Recordは、その独特なインターフェースと、ミュージシャン視点での機能設計により、多くのユーザーから支持されました。現在ではReasonに統合されていますが、その思想はReasonにも受け継がれています。