Red (島本理生)

小説『Red』の概要

『Red』（レッド）は、日本の作家・島本理生が手掛けた官能小説。2013年から2014年にかけて「読売プレミアム」に連載された後、中央公論新社から出版されました。物語は、結婚し子供を持つ30代の主婦が元恋人との再会によって快楽に溺れ、家庭や自身のアイデンティティとの葛藤を描写しています。この作品は第21回島清恋愛文学賞を受賞し、2015年度には山田風太郎賞の候補にも選ばれました。さらに、映画化もされ、2020年には三島有紀子が監督を務め、夏帆と妻夫木聡が主演するなど、多くの人々にその内容が広がりました。

執筆の背景

島本理生は、思春期の女性を題材とした作品が多かった作家で初の官能小説に挑みました。家庭を持つことで新たに実感したことや、自身の生活のリアルを真摯に描くことが大きなテーマです。島本は、「子供の視点では物語が描きにくくなった」と感じ、同時期に同じような境遇にいる読者に向け、よりダイレクトな表現を試みることにしました。タイトルの『Red』には官能的で危険なイメージが込められ、著者のこれまでの作品とは一線を画すカラーを採用しています。彼女は「30代女性のリアルを描きたい」と語っており、その思いが作品全体に反映されています。

あらすじ

物語の主人公、村主塔子は結婚し、娘を育てながら専業主婦として生活しています。彼女はある友人の結婚式で、過去に不倫関係にあった元恋人の鞍田と再会します。生活は穏やかながらも、育児に追われる毎日と夫の冷たい態度に少しずつ嫌気が差していく塔子。彼女は鞍田との再会を通して、過去の自分を思い出し、再び彼との関係が深まっていく様子が描かれます。

夫である真がセックスを求めないことから生じる不安と、鞍田との関係のダイナミズムが交錯し、塔子は徐々に不倫の渦に巻き込まれていきます。塔子は鞍田の援助を受けて仕事に就くことで少しずつ自由を得るものの、その自由の代償が鞍田との不安定な関係に繋がることになります。

そして、物語の展開は急を告げます。鞍田が重い病に苦しむようになり、塔子は自分が何を選ぶべきか悩むことになります。家族としての立場と恋人としての情熱の狭間で苦しむ彼女の姿が切々と描かれていきます。

数年後、塔子の娘・翠が中学生になったとき、母親の過去に触れることとなり、母と鞍田との間にあった出来事が彼女に与える影響の深さを感じ取ることになります。物語の終盤では、塔子が涙を流す場面が描かれ、母としての愛情と過去の悩みが交錯します。

主要な登場人物

• - 村主塔子（むらぬし とうこ）: 主人公であり、専業主婦。家庭の理想とリアルな欲望に悩む。
• - 鞍田秋彦（くらた あきひこ）: 塔子の元恋人であり、不倫関係に戻る相手。
• - 村主真（むらぬし しん）: 塔子の夫。

書誌情報

• - 『Red』: 2014年9月25日、中央公論新社（ISBN 978-4-12-004654-4）
• - 文庫版: 2017年9月22日、中公文庫（ISBN 978-4-12-206450-8）

映画化

この小説は映画化もされ、2020年に公開されました。監督の三島有紀子が作品を再構築し、異なる結末を持っています。映画では、キャストに夏帆が塔子を演じ、妻夫木聡が鞍田を演じるなど、豪華な陣容となっています。映画はR15+指定を受けており、視覚的に官能的な表現が行われています。

本作は、性愛と家庭の相克を繊細に描いた作品であり、現代女性の内面的な苦悩や欲望に対する考察を促すものです。

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