Ricky リッキー

『リッキー』：翼が生えた赤ちゃんの奇跡と、家族の葛藤

2009年公開のフランス・イタリア合作映画『リッキー』は、ローズ・トレメインの短編小説を原作とする、心温まるファンタジー作品です。監督は、数々の話題作を手掛けたフランソワ・オゾン。シングルマザーのカティ、幼い娘のリザ、そして二人の間に生まれた赤ちゃんリッキー。平凡な日常に、突然訪れた奇跡と試練を描いています。

カティは工場で働くシングルマザー。娘のリザと二人、郊外の団地で慎ましい暮らしを送っています。日々の生活に追われ、楽しみもなく、感情の起伏も少ない、退屈な日々が続いていました。そんなある日、工場にやってきた新入りのパコと恋に落ちます。スペイン人のパコは明るく朗らかで、カティの生活に温かい光をもたらします。やがて二人の間に、リッキーが誕生します。

しかし、幸せは長くは続きませんでした。育児の苦労や仕事のストレスから、カティとパコは次第に言い争いをするようになります。お互いを理解し合えず、すれ違いは日に日に増していき、家庭は不安定になっていきます。そんな中、カティはリッキーの背中に痣を発見します。パコの虐待を疑ったカティは、パコを家から追い出してしまいます。

しかし、痣はすぐに消えるどころか、どんどん大きくなり、血を滲ませるようになりました。そして、ある日、信じられないことが起こります。痣から、小さな翼が生えてきたのです。この驚くべき出来事によって、リッキーの運命、そしてカティとリザの生活は大きく変わろうとしていました。

この映画は、単なるファンタジーにとどまりません。シングルマザーの孤独、現代社会の抱える問題、家族のあり方など、様々なテーマが複雑に絡み合っています。翼が生えた赤ちゃんという、非現実的な設定をベースにしながらも、登場人物たちの感情や葛藤は、非常にリアルで共感を呼びます。

アレクサンドラ・ラミーが演じるカティは、シングルマザーとしての苦労や、愛する子供への愛情、そして複雑な感情を繊細に表現しています。一方、セルジ・ロペス演じるパコも、単なる悪役ではなく、様々な事情を抱えた人間として描かれています。

フランスの批評サイト「アロシネ」では26のメディアによる平均評価が5点満点中3.7点、Rotten Tomatoesでは16件のレビューのうち10件が高評価(63%)、平均点は10点満点中6.4点と、批評家の間でも高い評価を得ています。Metacriticでは9件のレビューのうち高評価3件、賛否両論6件で、平均点は100点満点中53点と、一定の評価を得ている作品です。

『リッキー』は、奇跡と現実が交錯する、感動的な物語です。非現実的な出来事をきっかけに、家族の絆や、人生の意味について考えさせられる、忘れられない作品となっています。翼が生えた赤ちゃんという、奇想天外な設定ながらも、普遍的なテーマが丁寧に描かれており、様々な世代の観客に響く、おすすめの映画です。

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