S-25ロケット弾

S-25 ロケット弾システム

S-25は、ロシア連邦によって開発・製造された航空機から地上目標を攻撃するための大型ロケット弾システムです。これは、広義の空対地兵器に分類され、特に近接航空支援（CAS）や地上部隊への直接火力支援、あるいは特定の堅固な目標構造物への攻撃任務において効果を発揮することを目的として設計されています。

構成と運用

S-25ロケット弾システムの中核を成すのは、その名称が与えられたロケット弾本体です。このロケット弾は、単体で運用されるのではなく、O-25と呼ばれる専用設計の発射ポッドと組み合わせて使用されます。S-25ロケット弾はO-25ポッドに装填され、このポッドが航空機の兵装パイロンに懸架されます。任務遂行時、航空機は目標空域へ進入し、O-25ポッドを介してS-25ロケット弾を目標に向けて発射します。O-25ポッドは、ロケット弾の安全な搭載、電気的接続、そして発射プロセスを円滑に行うための重要な機能を提供します。

S-25ロケット弾システムの主要な運用プラットフォームとして知られているのは、ロシアの著名な攻撃機であるSu-25「フロッグフット」です。Su-25攻撃機は、地上攻撃任務に特化しており、優れた堅牢性、高い生存性、そして豊富な武装搭載能力を備えています。S-25ロケット弾は、Su-25の対地攻撃能力における主要な要素の一つであり、この機体から効果的に運用されることで、広範な地上目標に対して強力な打撃を与えることが可能です。Su-25は複数のO-25ポッドを同時に搭載することができ、これにより一度の出撃で多数のS-25ロケット弾を使用することができます。

バリエーション

S-25ロケット弾システムには、基本となる設計を基に、様々な戦術的状況や目標の種類に対応するために改良が施された複数の派生型が存在します。これらのバリエーションは、搭載する信管の種類や誘導方式が異なっており、標準型だけでは対応が困難な目標や状況においても、より効果的な攻撃を可能にしています。確認されている主なS-25ロケット弾のバリエーションは以下の通りです。

S-25: これはS-25ロケット弾システムの標準的な基本モデルです。特定の誘導機能や高度な信管を持たない無誘導ロケット弾であると考えられており、主に広範囲に散らばる目標や、特定エリアへの飽和攻撃など、命中精度よりも面制圧効果が求められる任務に用いられる可能性があります。

S-25-O: この派生型は、名称中の「O」が示すように、近接信管を備えている点が特徴です。近接信管は、目標に物理的に接触する直前、設定された距離や高度で自動的に弾頭を起爆させる機能を有します。これにより、軟目標や非装甲車両、あるいは兵員が集結しているような広範囲の目標に対して、炸裂時の破片効果を最適な位置で発生させることが可能となり、より広範囲かつ効果的にダメージを与えることが期待されます。地表よりわずかに上で起爆させることで、効果範囲を最大化することが可能です。

S-25-OFM: このモデルは、「OFM」という符号が示唆するように、対硬化目標（Hardened Targets）攻撃に特化して設計された派生型です。硬化目標とは、強化されたバンカー、掩体壕、地下構造物、強固な格納庫、あるいは装甲化された指揮車両など、通常の高性能炸薬弾頭では十分な破壊効果が得られにくい目標を指します。S-25-OFM型は、これらの強固な目標を貫通するために強化された弾頭構造や、貫通後に内部で炸裂させるための遅延信管などを採用していると考えられます。これにより、敵の重要な防御施設などに対しても破壊的な攻撃を加えることが可能となります。

S-25L: この派生型は、名称の「L」が示すように、レーザー誘導システムを搭載しています。標準的な無誘導ロケット弾が発射後の軌道修正が不可能であるのに対し、S-25L型は、航空機自身または地上の観測班からのレーザー照射を受けて目標を捕捉し、その反射光を追尾することで高い精度での誘導を実現します。これにより、特定のピンポイント目標や移動目標に対して、無誘導型と比較して格段に高い命中精度で攻撃を行うことができます。高価値目標への精密攻撃や、周辺への被害を最小限に抑えたい場合に有効な選択肢となります。

これらの多様なバリエーションの存在により、S-25ロケット弾システムは、単なる無誘導ロケット弾の枠を超え、多様な戦術的要求と目標の性質に対応可能な柔軟性の高い航空兵器システムとなっています。Su-25のような攻撃機に搭載され、標準攻撃から精密攻撃、硬化目標攻撃まで幅広い任務をカバーすることで、ロシア航空宇宙軍の対地攻撃能力において重要な役割を担っています。

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