S-II

S-II：サターンVロケット第二段の詳細

S-II（エス・ツー）は、アメリカのアポロ計画において、サターンV型ロケットの第二段として重要な役割を担ったロケットです。ノース・アメリカン社によって製造され、液体水素を燃料、液体酸素を酸化剤とする5基のJ-2ロケットエンジンを搭載し、総推力520トン（5MN）でサターンVを大気圏上層部まで押し上げました。S-IIの開発は、単にロケットを製造するだけでなく、革新的な技術を導入し、宇宙開発の歴史を大きく進歩させるものでした。

開発経緯

S-IIの開発は、1959年に国防高等研究計画局（DARPA）が液体水素を燃料とする高出力ロケットエンジンの開発を求めたことに端を発します。ロケットダイン社がエンジンの開発契約を獲得し、これが後のJ-2ロケットエンジンへと結実しました。並行してS-II本体の開発も進められましたが、当初の設計では、全長22.5m、直径6.5mで、4基のJ-2エンジンを搭載する予定でした。

1961年、マーシャル宇宙飛行センターはS-II本体を製造する企業を選定するため、30社以上の航空機メーカーを集め、要求性能の概要を説明しました。しかし、1ヶ月後に名乗りを上げたのはわずか7社に過ぎませんでした。そのうち3社は書類選考で落選し、初期設定値が小さすぎると判断されたことから、ロケット全体のサイズを大きくすることが決定しました。この決定は、残った4社にとってより大きな困難をもたらしました。さらに、NASAは当時、機体の大きさを具体的にどのように設定し、上段にどのロケットを搭載するかをまだ決定できていませんでした。

最終的に、1961年9月11日、ノース・アメリカンが製造契約を獲得し、製造工場は政府によってカリフォルニア州シールビーチに建設されました。

概容

S-IIは、燃料と酸化剤を満載すると約500,000kgにもなります。その内、機体そのものの重量はわずか3％に過ぎず、残りの97％は液体酸素と液体水素が占めています。ロケット底部には、5基のJ-2エンジンが搭載されています。中央の1基は固定されており、周囲の4基にはジンバル（首振り）機構が備えられています。これにより、ロケットの飛行を精密に制御することが可能になります。

燃料タンクと酸化剤タンクは、S-ICのように二つに分かれておらず、一枚の隔壁で隔てられているだけです。この隔壁は、フェノール樹脂のハニカム構造をアルミニウムのシートでサンドイッチのように挟み込んだ構造で、二つのタンクの70℃もの温度差を絶縁し、約3.6トンの軽量化に成功しました。

液体酸素タンクは直径10m、長さ6.7mの長円形で、頂部と底部は上記シートを三角形に切ったものを12枚溶接して作られ、二本のリングで補強されています。このシートは、211,000リットルの水を入れたタンクの底に設置し、水中で火薬を爆発させることで球状に成形されました。

液体水素タンクは6個の円筒を積み重ねて作られており、そのうち5個は高さ2.4mで、残りの1個は高さ0.69mです。液体水素は絶対温度20K（摂氏マイナス252.6℃）以下に保たなければならず、外気温からの遮断が大きな課題でした。初期には溶接部分に亀裂が発生するなどの問題がありましたが、余剰分の水素を噴霧して温度を下げることで解決しました。

S-IIは、溶接部分や外殻の嵌め合わせが正確に行われるよう、垂直の状態で組み立てられます。この精密な組み立て工程が、S-IIの信頼性と性能を支える重要な要素となっています。

製造記録

S-IIの製造記録は、その開発と製造における技術的な挑戦と革新を物語っています。S-IIはアポロ計画の成功に不可欠な要素であり、その開発は宇宙開発史における大きな足跡となりました。このロケットの存在が、人類を月へと送り届けるという偉業を可能にしたと言えるでしょう。

外部リンク

Apollo Maniacs（アポロ・マニアックス）

もう一度検索