SAMPEX

SAMPEX（Solar Anomalous and Magnetospheric Particle Explorer）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）のSMEX（Small Explorer）計画の一環として開発された人工衛星です。このミッションは、地球周辺の宇宙空間における高エネルギー粒子の観測を目的としており、特に太陽活動や地球磁気圏の影響を受ける粒子に着目していました。

1992年6月3日に、SAMPEXはヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられ、極軌道に投入されました。極軌道とは、地球の極上空を通過する軌道であり、これによりSAMPEXは地球全体を観測することが可能となりました。観測機器として、重イオン広域比例計数望遠鏡（HILT）、低エネルギーイオン構成分析器（LICA）、質量分析望遠鏡（MAST）、および陽子/電子望遠鏡（PET）が搭載されました。これらの機器は、それぞれ異なる種類の粒子を検出するように設計されており、広範囲のエネルギー範囲と粒子種をカバーすることができました。

重イオン広域比例計数望遠鏡（HILT）は、特に重イオンの観測に特化しており、リチウム（Li、原子番号3）からニッケル（Ni、原子番号28）までの元素の同位体構成を、10から数百MeV/nucleonのエネルギー範囲で測定しました。このデータは、宇宙線や太陽フレアから放出される高エネルギー粒子の起源や組成を理解する上で非常に重要でした。

低エネルギーイオン構成分析器（LICA）は、より低エネルギーのイオンを観測し、地球磁気圏の粒子組成を詳細に分析しました。これにより、地球磁気圏内で発生する様々な現象、例えばオーロラの発生メカニズムなどを解明する上で重要な手がかりが得られました。

質量分析望遠鏡（MAST）は、粒子の質量を精密に測定し、異なる元素や同位体を識別しました。このデータは、宇宙における元素の起源や進化を研究する上で不可欠でした。陽子/電子望遠鏡（PET）は、陽子と電子を識別して観測し、太陽風や地球磁気圏におけるこれらの粒子の挙動を調査しました。

SAMPEXの観測ミッションは、12年以上にわたり続けられ、2004年6月30日に終了しました。このミッションで得られたデータは、宇宙物理学、特に太陽物理学や地球磁気圏の研究に多大な貢献をしました。SAMPEXが取得したデータは、今もなお科学研究に利用されています。その後、SAMPEXは2012年11月13日に大気圏に再突入し、その役目を終えました。SAMPEXの成功は、その後のSMEX計画におけるミッションに大きな影響を与えました。SAMPEXの観測データは、現在もNASAのデータベースで公開されており、研究者が利用できるようになっています。

もう一度検索