SCIENCE FICTION (宇多田ヒカルのアルバム)

宇多田ヒカル 25 周年の軌跡を辿るベストアルバム『SCIENCE FICTION』

2024年4月10日にリリースされた宇多田ヒカルのオールタイムベストアルバム『SCIENCE FICTION』は、彼女のデビュー25周年を記念した作品です。エピックレコードジャパンからのフィジカル版と、ユニバーサルミュージックからの配信版という、レーベルの垣根を越えた共同リリースとなりました。

制作背景とコンセプト

前作『BADモード』リリース後、コーチェラ・フェスティバル出演がきっかけとなり、担当プロデューサーの三宅彰氏から25周年記念ライブの提案を受け、アルバム制作がスタートしました。宇多田ヒカル自身、「今までベストを出す意味が分からなかった」と語っていましたが、25周年という節目、そして「5の二乗」という数字の持つ意味に共感し、制作に賛同しました。長年支えてくれたファンへの感謝の気持ちを込めたアルバムにしたいという思いも込められています。

アルバムタイトルである『SCIENCE FICTION』は、ファンや音楽関係者から自身の音楽ジャンルについて度々質問を受けていた宇多田ヒカルが、フィクションでもノンフィクションでもない独自の音楽性を表現するために選びました。宇宙や科学、文学など、彼女が興味を持つ分野からインスピレーションを得て、アルバムのコンセプトやアートワーク、新曲の制作、ツアーのセットリストなどに反映されています。

音楽性

本作は、宇多田ヒカルのデビュー初期のR&B、中期のハウスやシンセサウンド、活動休止後の生楽器編成など、25年間の音楽活動の変遷を網羅しています。特に、10曲のニューミックスは、オリジナル音源よりも打ち込みの重厚感が増し、現代的なサウンドにアップデートされています。

例えば、『COLORS』や『SAKURAドロップス』『Goodbye Happiness』などは、原曲の雰囲気やリズム感を活かしつつ、ハウスやダンスミュージックの要素を取り入れたアレンジが施されています。一方、(Re-Recording)された楽曲は、オリジナルよりも楽器の種類を減らし、打ち込みの重さで楽曲の輪郭を際立たせることで、新たな魅力を引き出しています。アルバムタイトルである『SCIENCE FICTION』が示す通り、再録や新たなミックス曲、新曲のすべてに、SF的な新しさが感じられる点が特徴です。

リリースとプロモーション

2023年12月9日に発売が発表された後、2024年1月15日にリリース日や収録楽曲などの詳細が発表されました。CD(フィジカル)・ダウンロード・ストリーミングの同時発売は、宇多田ヒカルのアルバムとしては初の試みです。初回盤と通常盤の2形態で販売され、初回盤には宇多田ヒカルのアルバムとしては初のレンチキュラー素材が採用されました。

発売に先駆けて、YouTubeでは『Automatic』から『HEART STATION』までの21曲と『桜流し』のMVを4Kにアップグレードした動画が公開されました。また、新曲『Electricity』は伊藤忠商事の企業イメージソングに、『traveling (Re-Recording)』は日本コカ・コーラ『綾鷹』のCMソングに起用され、大規模なプロモーションが展開されました。

アルバム発売日には、UNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKUで期間限定のポップアップストアが開催され、衣装展示や電子寄せ書きコーナー、CD・レコードの販売などが行われ、ファンを中心に賑わいました。渋谷駅や新宿駅では大規模な広告ジャックが行われ、台湾や香港など海外でもプロモーションが展開されました。

発売直前の4月8日には「CDTVライブ!」に出演し、『First Love』を24年ぶりにTV歌唱し話題となりました。その他にも音楽番組に出演するなど、メディア露出も積極的に行われました。

チャート成績と評価

アルバムはBillboard Japanのアルバムチャートで初週185,568枚を売り上げ、首位を獲得。女性アーティストとして本年度最高の初週売上を記録しました。オリコンでもCD・ダウンロード・合算アルバムチャートで首位を獲得し、3冠を達成。iTunesの日本、台湾、香港、マカオなど6か国のアルバムチャートでも1位を獲得しました。

Billboard Japanの上半期チャートではHot Albums3位、CDセールス5位、ダウンロード数1位を獲得。オリコンの上半期チャートでも合算アルバム3位、CD3位、ダウンロード数3位と好成績を収めました。7月にはストリーミング再生が1億回を突破し、アナログ盤も2024年上半期アルバムレコードランキングで1位となりました。

オリコン年間ランキング2024では合算アルバム7位、アルバム10位、ダウンロード数2位、Billboard Japan2024年間チャートではHot Albums9位、アルバム13位、ダウンロード2位、Spotifyの2024年国内で最も聴かれたアルバム10位と、CD・DL・ストリーミングの3部門で好成績を収めました。本年度の女性ソロアーティストアルバム最高売上となり、自身のアルバムでは2018年発売の『初恋』以来となる大ヒットとなりました。第66回日本レコード大賞では特別アルバム賞を受賞しています。

『SCIENCE FICTION』は、宇多田ヒカルの25年間の音楽活動の集大成であり、新たなファン層を獲得した、記念碑的な作品と言えるでしょう。

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