SEX (写真集)

マドンナ写真集『SEX』：論争を呼んだ衝撃作

1992年10月21日、ワーナー・ブックスから発売されたマドンナの写真集『SEX』。スティーブン・マイゼルが撮影を手掛け、発売前から大きな話題を呼びました。しかし、その内容はヌードや過激な性描写を多分に含んでおり、社会現象を巻き起こすほどの論争を呼ぶこととなりました。

写真集の内容

写真集『SEX』は、単なるヌード写真集ではありません。ソフトコアポルノ、性的な行為、同性間の性行為など、成人向けの過激な内容が特徴です。BDSM（サディズムとマゾヒズム）やアニリングスといった要素も含まれ、性的ロールプレイ、緊縛、顔面騎乗、青姦、剃毛プレイなど、刺激的な写真が数多く掲載されています。

出演者はマドンナ本人の他、イザベラ・ロッセリーニ、ウド・キア、ビッグ・ダディ・ケイン、ヴァニラ・アイス、ナオミ・キャンベル、トニー・ウォード、ジョーイ・ステファノ、タティアナ・フォン・フュシュテンベルク、イングリッド・カサーレスなど、各界の著名人が名を連ねています。

メタリックな表紙には「X」のマークが刻まれ、その挑発的なデザインも話題となりました。

制作の裏側

『SEX』は、マドンナがタイム・ワーナーと交わした6千万ドルのマルチメディア契約の最初のプロジェクトでした。撮影はスティーブン・マイゼルが担当し、約2万枚もの写真が撮影されました。その中から厳選された475枚が写真集に収録されています。

当初、写真集のタイトルは「X」になる予定でしたが、スパイク・リー監督の映画と同名だったため変更されました。制作過程では、バイオレンスや宗教的な問題でマドンナと出版社であるワーナー・ブックスが対立することもあったようです。

制作作業は極秘裏に進められ、制作に関わった20人は秘密保持契約にサイン。製本を担当したキャラウェイ・エディション社は、プリント作業時に8人の警備員を配置するなど、厳戒態勢が敷かれました。

リリースと反響

写真集の発売前から、その内容に関する噂が広まり、大きな注目を集めました。1992年10月21日に発売されると、多くの書店が取り扱いを拒否し、ボイコット運動も起こるなど、社会現象となりました。

多くの批評家は、『SEX』はマドンナの新しいアルバムの売り上げを伸ばすための計算された論争であると指摘しました。また、過激な内容に対して「行き過ぎだ」という批判も多く、マドンナに対する反発を生むことにもなりました。

しかし、論争や否定的な意見にも関わらず、『SEX』はアメリカで発売当日に15万部を売り上げ、ワシントンポストとニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに掲載。3日後には全世界で第一版の150万部が完売しました。書店チェーンのウォールデンブックスは、写真集が発売日当日に2万2千部を売り上げ、これほど早く本が売り切れるのを見たことがないと驚き、『SEX』を最も成功したコーヒーテーブル本と評しました。

発売当初、アメリカでは毎週50万部、海外でもほぼ同数が売れました。

マドンナは、ニューヨーク市のインダストリア・スーパースタジオで写真集の出版記念パーティーを開催。リトル・ボー・ピープ風の衣装で登場し、話題を呼びました。

日本国内では、修正版として『SEX by Madonna』というタイトルで同朋舎出版から発売されました。しかし、男性器が修正されていない輸入版は事実上禁止されました。

現在、この写真集は絶版となっていますが、Bookfinder.comでは2011年時点で最も人々が欲しがる絶版本として扱われています。

2022年には、発売30周年を記念して800ページの再装版が発売され、展覧会も開催されました。展覧会にはマドンナ本人や娘のローデス、写真集に参加したモデルなどが訪れました。

まとめ

マドンナの写真集『SEX』は、その過激な内容で賛否両論を巻き起こしましたが、彼女のアーティストとしての革新性と表現の自由を追求する姿勢を示す作品として、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

もう一度検索