SH-60L (航空機)

SH-60L　哨戒ヘリコプター

SH-60Lは、海上自衛隊向けに開発された哨戒ヘリコプターであり、SH-60Kの能力向上型として位置づけられています。この機体は三菱重工業と日本の防衛省が協力して開発し、現代の海上戦力の向上を目指しています。SH-60Lは、特に近年の海洋情勢の変化に対応するために設計されています。

来歴

SH-60Lは、海上自衛隊のHSS-2B哨戒ヘリコプターの後継機として選定されました。その開発は1983年に始まり、SH-60Jとして1991年に部隊に導入されました。このモデルの運用実績を受け、2005年にSH-60Kが部隊使用承認を得ました。SH-60Kは、さらなる能力向上を目指し、設計やシステムに改良が加えられた機体でした。

しかしながら、周辺国の潜水艦の静音化や高性能化が進む中で、海上自衛隊の対潜戦能力のさらなる強化が求められるようになりました。特に、ソマリア沖の海賊対策派遣の経験から、機体の性能の向上や多機能対応が必要とされました。これを受け、2015年に「回転翼哨戒機（能力向上型）」の開発が発表され、SH-60Lの設計が始まりました。

開発は段階的に進み、設計、製造、試作機の構成部品が整えられました。初飛行は2021年5月に行い、2023年12月に防衛省から開発完了が正式に発表されました。

設計

SH-60Lは、SH-60Kの設計を基にしていますが、多くの点で改良されています。エンジンや通信システムなど、60－70％の共通性を持ちながらも、高温環境下での性能に特に配慮されています。具体的には、高温時の空気密度の低下によるエンジン出力の制約を改善するため、駆動系統はアップグレードされており、トランスミッションやギアボックスの補強が施されています。

また、テイルローターブレードのピッチ角度の調整範囲も広がり、操舵特性が向上しています。さらに、機体の剛性も強化され、飛行安定性や速度向上が見込まれています。

装備

SH-60Lのミッションシステムは、従来の探知能力を大きく向上させるため、マルチスタティック戦術に対応しています。これにより、自機のソナーのみならず、他のソナーから受信したデータをも統合的に処理可能になり、探知能力の強化が図られています。

また、水上艦艇への警戒監視能力が向上しており、自動船舶識別装置（AIS）や可視・赤外線カメラを搭載しています。これにより、乗員の負担を軽減することが期待されています。兵装面では、Mk.46魚雷や97式魚雷、AGM-114M空対艦ミサイルが搭載可能です。

運用史

2021年9月には、飛行試験機が防衛装備庁に納入され、その後の性能確認試験を経て、SH-60Lとしての部隊使用承認を2023年に受けました。今後、6機の調達が計画されているとのことですが、新しい防衛力整備計画の影響により、調達数は変動する可能性があります。

2024年には、米海軍MH-60Rとの共同訓練が行われる予定であり、国際共同運用の一環としての役割も果たすことが期待されています。

保有数と配備部隊

2024年3月末現在、SH-60Lは試作機を含めて2機が保有されている状況です。これにより、海上自衛隊の対潜能力を不断に向上させる一助となってくれることでしょう。

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