SITA

SITA（シータ）は、正式名称をフランス語でSociété Internationale de Télécommunications Aéronautiquesといい、その頭文字をとった略称として世界的に広く知られている組織です。航空輸送業界に特化した多岐にわたる情報技術（IT）サービスと通信ソリューションを提供する国際企業として、その活動を展開しています。組織としての本部はスイスのジュネーヴに置かれています。

当初は、航空データ通信のための基盤を構築し、航空機の安全で円滑な運航を支えることを目指して設立されました。非営利の組織として活動を始め、航空会社や空港、管制機関といった、空の旅に不可欠な関係機関を結ぶための専用情報通信ネットワークの整備・運用に尽力してきました。このネットワークは、TypeBと呼ばれる専用パケット通信網の運用方式や技術基準に基づいて構築されており、世界の主要な空港や航空関連施設間での情報交換を可能にしています。

SITAが提供する情報通信技術は、航空管制、運航管理、旅客サービス、手荷物追跡など、航空機の運航に関わるあらゆる側面に深く関わっています。これらのシステムを通じて、航空会社は運航状況の正確な把握、定時運航のための調整、旅客への情報提供などを効率的に行うことができます。また、管制機関との連携による安全な空域管理にも貢献しており、まさしく「空の安全と定時性の確保」という航空業界の根幹を支える重要な役割を担っています。

その国際的なネットワークは広範に及び、225の国と地域、900ヶ所以上の拠点間を結んでいます。この巨大な情報通信インフラストラクチャを基盤として、世界中の600以上の航空関連企業に対して、業務効率化やサービス向上に資する様々な業務用アプリケーションの提供やサポートを行っています。インターネット上のドメインシステムにおいても、航空関連企業向けの専用トップレベルドメインである「.aero（ドット エアロ）」のスポンサーを務めるなど、航空分野に特化したサービスの展開も行っています。

日本においても、SITAは「シータ」としてその名が知られています。かつて日本に進出した際には、「国際航空通信共同体」、後に「国際航空情報通信機構」という日本語の名称を便宜上使用していた時期がありましたが、現在は「SITA Information Networking Computing B.V.」という企業名で活動しています。組織全体としてはスイスのジュネーヴに本部を置いていますが、アジア・パシフィック地域の活動拠点としてはシンガポールに地域本部が設けられています。組織の規模としては、例えば2016年時点のデータでは、全世界で4709名の従業員がおり、うち日本国内には19名が在籍していました。

一方で、国際的な情報技術企業として活動するSITAは、サイバーセキュリティの脅威にも直面しています。2021年3月には、同社の旅客サービスシステム（PSS）のうち、特に米国で運用されているサーバーがサイバー攻撃を受け、一部の個人情報が流出するという事案が発生しました。この影響は日本の航空会社にも及び、特に日本航空（JAL）や全日本空輸（ANA）といった主要航空会社のマイレージ会員情報の一部が漏洩したことが確認されています。このような事例は、航空業界の情報通信システムが抱えるリスクと、それに対する継続的な対策の重要性を浮き彫りにしています。

総じて、SITAは国際航空輸送業界における情報通信の基幹を担う存在であり、航空機の安全かつ効率的な運航、そして旅客サービスの円滑な提供に不可欠な貢献をしています。そのグローバルなネットワークと多様なITサービスは、現代の航空交通システムを支える上で欠かせないインフラストラクチャの一部となっています。

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