SLIPPY DANDY

『SLIPPY DANDY（スリッピー ダンディー）』 は、1987年8月6日から同年9月3日にかけてフジテレビの深夜放送枠『深夜秘宝館』内で放送された日本の短編テレビアニメシリーズです。毎週木曜日に約2分間という短い放送時間で、全4話が制作されました。

本作は、愛する女性の気を惹こうと奮闘する主人公が、ヒーローとなって難事件に立ち向かう姿を描くユニークな物語です。その脚本を手がけたほうとうひろし氏は、後に本作について語る中で、自身が当時ファンであったというベルギーのコミック『タンタン』シリーズや、アメリカの探偵漫画『ディック・トレイシー』といった作品からの影響を取り入れたことを明かしています。これらの作品が持つスリリングな冒険要素や、独特のキャラクター造形が、『SLIPPY DANDY』の世界観構築に寄与していると言えるでしょう。

物語の導入は、主人公であるスティーブが、憧れの女性オードリーに想いを告げるも、あっけなく振られてしまう場面から始まります。失意の底に突き落とされたスティーブでしたが、彼はオードリーの心を取り戻すべく、大胆な行動に出ます。黒い覆面をまとい、トレンチコートを羽織った謎めいた姿に変身したスティーブは、自らを「スリッピー・ダンディー」と名乗り、次々と舞い込んでくる様々な事件の解決に奔走する日々を送ることになります。その目的はただ一つ、ヒーローとしての活躍を通してオードリーを振り向かせることにありました。彼は持ち前の機転や行動力を武器に、様々な困難を乗り越え、オードリーのハートを射止めようと日々奮闘を続けます。

本作に登場する主なキャラクターは二人です。主人公の スリッピー・ダンディー は、自動車会社の社長の息子という恵まれた境遇にありながら、一途な恋心からスーパーヒーロー活動を開始します。もともとは「デイテクティブ・ダンディ」という名で活動していた彼ですが、その並外れた抜け目のなさや機転の利く様を見たオードリーによって、「スリッピー・ダンディー」というヒーロー名が付けられたとされています。彼の声は、後に多方面で活躍することになる声優の山寺宏一が担当しており、本作は山寺にとって初めてのアニメ主演作となりました。

そして、スリッピー・ダンディーが心を寄せるヒロイン、 オードリー は、新聞記者になることを夢見ている女性です。彼女の存在が、スリッピー・ダンディーの全ての行動原理となっています。

本作の制作には、以下の主要スタッフが携わりました。

原作・脚本: ほうとうひろし
キャラクターデザイン: 並木浩之
絵コンテ・演出: 小華和ためお
制作: メルヘン社

『SLIPPY DANDY』は、深夜枠の僅かな時間を利用した実験的な短編アニメでありながら、そのユニークな設定とコミカルかつスリリングな展開で、一部の視聴者に強い印象を残しました。短い尺の中に詰め込まれた密度の高い物語は、現代の短編アニメーションの先駆けとも言えるかもしれません。

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