SN 1572

SN 1572 （ティコの超新星）

SN 1572、一般に「ティコの超新星」と呼ばれるこの天体は、1572年11月11日にティコ・ブラーエによって初めて観測され、特に注目を浴びました。この超新星はカシオペヤ座に位置しており、目で見える超新星の中でも特に有名な一つとされています。その最大光度は-4等級に達し、金星と同等の明るさを誇りましたが、1574年3月には肉眼では見えなくなりました。

ティコ・ブラーエは、この超新星について詳しい観測記録を残し、彼の名とともに知られることになりましたが、最初にこの天体に気づいたのは彼ではなかったようです。おそらく1572年11月6日にヴォルフガング・シューラーが発見したと考えられています。また、イタリアの天文学者フランチェスコ・マウロリーコもブラーエより前にこの星を観測していたと言われています。

ティコの業績は、超新星のような現象が宇宙空間に存在することを証明した点にあります。それまで、西洋のキリスト教的な世界観では宇宙は神による完璧なものであり、目に見える変化は大気中で起こる現象と考えられていました。しかし、ティコはこの超新星が宇宙空間で起こったものであると確認し、その位置が変わらないことから、新たな見解を提示しました。

爆発のメカニズム

SN 1572は、元々白色矮星と普通の恒星との連星系であり、白色矮星が相手の星から物質を吸収し、チャンドラセカール限界に達したことにより爆発を引き起こしたと見られています。このタイプの超新星、Ia型超新星は、典型的には明確な星雲を形成せず、SN 1572もその例に含まれます。超新星の残骸は非常に微弱な星雲として1960年代にパロマー天文台で発見され、後にROSAT衛星の望遠鏡によって撮影されました。現在も、ガスは秒速約9,000キロで広がり続けています。

研究の進展

2004年には、イギリスの科学雑誌『ネイチャー』にてSN 1572の近くにあるG2型恒星の存在が報告されました。この恒星はティコの超新星の白色矮星に物質を提供した相手星であると考えられています。その後の研究では、この星がかつて主系列星であり、超新星爆発によって質量が剥ぎ取られたとの詳細が示されました。ティコGという名で呼ばれるこの星は、周囲の星々に比べて非常に速い136 km/sで運動しており、これは超新星の爆発によって放り出された結果であると考えられています。

2008年には、国立天文台ハワイ観測所、東京大学、マックスプランク天文学研究所などによる研究成果が発表され、超新星時の光が周辺の塵に反射する「光エコー」が観測されました。その結果、SN 1572がIa型超新星の中でも標準的な光度を持ち、地球から約12,000光年の距離に位置することが確認されました。

ティコの超新星は、その観測記録と、その後の研究により、宇宙の理解を深める重要な役割を果たしました。

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