SNAC

SNAC（Social Networks and Archival Context、ソーシャル・ネットワークス・アンド・アーカイバル・コンテクスト）は、アメリカ合衆国の複数の機関が連携して開発・運営している、歴史記録とその記録に関連する人物のネットワークに焦点を当てたオンラインプロジェクトです。この事業の主たる目的は、図書館、公文書館、博物館などが所蔵する膨大な歴史的資料の中から、特定の人物に関する記述や、異なる資料に登場する人物同士の関連性を効率的に発見し、それらの資料へのアクセスを容易にすることにあります。

歴史的な記録は、しばしば分散して存在しており、特定の人物の生涯や活動の全体像を把握することは容易ではありませんでした。SNACは、こうした分散した記録に登場する人物を特定し、その人物の経歴、活動、そして人間関係や所属組織とのつながりをデータ化することで、個々の記録資料が持つ文脈（コンテクスト）を再構築しようと試みています。これにより、利用者は単一の機関の所蔵にとどまらず、人物を中心に据えて横断的に資料を検索・たどることが可能となり、歴史上の出来事や人物像をより深く、多角的に理解するための強力なツールとなります。

本プロジェクトは、アメリカ合衆国内の主要な学術・文化遺産管理機関の協力のもとに運営されています。特に、バージニア大学図書館がこの事業の中心的な役割を担い、全体の推進と維持管理を行っています。その設立は2010年に遡り、その開始にあたっては、学術研究や文化財保護を支援する複数の重要な機関からの資金的な支援がありました。具体的には、人文科学分野の研究振興を担う全米人文科学基金（National Endowment for the Humanities, NEH）、アメリカ合衆国の公文書を管理するアメリカ国立公文書記録管理局（National Archives and Records Administration, NARA）、カリフォルニア州の大学図書館コンソーシアムであるカリフォルニア電子図書館（California Digital Library, CDL）、人文科学とデジタル技術の融合研究を進めるバージニア大学人文科学高度技術研究所（Institute for Advanced Technology in the Humanities, IATH at UVA）、そして情報科学分野の先進的な研究を行うカリフォルニア大学バークレー校情報大学院（UC Berkeley School of Information）といった、多岐にわたる分野の機関が出資を行い、SNACの基盤を築きました。

SNACのようなプロジェクトは、デジタル時代のアーカイブ資料利用に新たな地平を切り開くものです。歴史研究者、系譜学者、教育関係者、そして一般市民が、過去の記録にアクセスし、そこから新たな発見や洞察を得るプロセスを革新します。人物を中心とした情報構造は、従来の主題やキーワードによる検索では難しかった、人々の営みや社会的な相互作用に関する研究を促進し、アーカイブ資料の持つ潜在的な価値を最大限に引き出すことに貢献しています。継続的なデータ拡充と機能向上により、SNACは今後も歴史記録の発見・利用における重要なインフラとしての役割を果たしていくことが期待されています。

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