SPHEREx

SPHEREx（スフィアエックス）: 宇宙の謎を解き明かす近赤外線全天サーベイ望遠鏡

SPHEREx（Spectro-Photometer for the History of the Universe, Epoch of Reionization, and Ices Explorer）は、NASAが主導する次世代の宇宙望遠鏡ミッションです。このミッションは、全天をサーベイし、約4億5000万個もの銀河の近赤外線スペクトルを測定することを目的としています。SPHERExは、宇宙の歴史、特に宇宙の初期段階におけるインフレーション、銀河の形成と進化、そして惑星系における水の起源に関する重要な手がかりを提供することが期待されています。

ミッションの概要

SPHERExは、0.75～5.0マイクロメートルの近赤外スペクトルを観測する分光光度計を搭載しています。この望遠鏡は、可動部を持たない単一の観測装置を使用し、全天を96の異なるカラーバンドでマッピングします。このカラー分解能は、これまでの全天マップをはるかに凌駕します。ミッション期間は公称25ヶ月で、その間に全天を4回マッピングします。この観測によって、銀河の赤方偏移を正確に分類し、ハロー内の光や再電離時代からの信号を調べることができます。

科学的目標

SPHERExの主な科学的目標は以下の通りです。

初期宇宙の解明: インフレーションと呼ばれる宇宙の初期段階を引き起こした原因を探ります。
銀河の起源と歴史: 銀河がどのように形成され、進化してきたかを解明します。
* 惑星系における水の起源: 惑星系における水の存在と起源を探求します。

さらに、SPHERExは、ユークリッド宇宙望遠鏡とナンシー・グレース・ローマン[[宇宙望遠鏡]]の分光調査を補完する役割も担います。SPHERExが提供する前景銀河の高精度赤方偏移情報は、これらの望遠鏡による背景銀河の重力レンズ測定と組み合わせることで、前景銀河を取り囲む暗黒物質の分布を直接測定することが可能になります。

観測技術

SPHEREx望遠鏡は、口径20cmのトリプルミラー望遠鏡で、3.5° x 11°の視野と、6つの2k x 2kテルル化水銀カドミウム(HgCdTe)光検出器アレイを備えています。各検出器アレイは線形可変フィルターで覆われており、アレイの一軸に沿って変化する帯域中心を持つ狭帯域応答を提供します。SPHERExは複数回の露光によってスペクトルを取得し、特定の天体を視野内の複数の位置に配置することで、様々な波長での測定を可能にします。

開発と打ち上げ

SPHEREx宇宙船はボール・エアロスペース＆テクノロジーズ社によって製造され、ペイロードはカリフォルニア工科大学（Caltech）とNASAのジェット推進研究所（JPL）によって開発されています。韓国天文宇宙科学研究院も、極低温試験施設の面でサポートを提供しています。

SPHERExの提案は2014年にNASAに提出され、2019年2月に中級エクスプローラー計画ミッションとして選定されました。打ち上げは当初2024年6月を予定していましたが、現在では2025年4月にヴァンデンバーグ宇宙軍基地からスペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられる予定です。このミッションは、宇宙の謎を解き明かす上で重要な役割を果たすことが期待されています。

まとめ

SPHERExは、その高い観測能力と広い視野、そして詳細な分光観測能力により、宇宙の進化と構造、初期宇宙の状態、惑星系における水の起源など、様々な宇宙の謎に迫る上で重要な役割を果たすでしょう。今後の観測データの分析によって、宇宙の理解が大きく進むことが期待されます。

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