SPT-100

SPT-100

SPT-100は、かつてソビエト連邦に存在したファケル実験設計局によって開発され、製造されているホールスラスタ型の電気推進システムです。

概要

「SPT」という名称は「Stationary Plasma Thruster」の略称であり、これはプラズマを生成・加速して推力を得る一種の電気推進器であることを示しています。SPT-100は、そのSPTシリーズの中でも特に広く普及したモデルです。

このスラスタの最大の特徴は、宇宙空間における運用実績が極めて豊富である点にあります。2008年の時点で、ホールスラスタとしては最も多くの飛行機会を得ており、SPTシリーズ全体を含めると、採用された人工衛星の数は140機を上回ります。この実績は、SPT-100の高い信頼性を示すものと言えるでしょう。

2011年時点での採用事例を見ると、ロシアの衛星だけでなく、海外の衛星でも多数使用されていました。具体的には、18機のロシア製衛星に加え、IPSTAR-II、Galaxy 28、Ekspress A、AMといった14機の外国製衛星に搭載されていました。これは、SPT-100が国際的にも認められた推進システムであることを示しています。

ファケル実験設計局は、SPT-100以外にも、出力の異なる様々なSPTシリーズを提供しています。例えば、4.5kWクラスのSPT-140Dや、より大型の25kWクラスのSPT-230などが開発・販売されており、人工衛星の多様なニーズに対応できる製品ラインナップを構築しています。

技術仕様

SPT-100の主な技術仕様は以下の通りです。

形式: リニア型ホールスラスタ
推進剤: キセノン
公称推力: 80mN
比推力: 1,600秒 (s)
イオンビーム放出部直径: 100mm
消費電力: 1.35kW

これらの仕様は、SPT-100が典型的な電気推進器としての特徴を持っていることを示しています。特に1,600秒という高い比推力は、化学推進に比べて同じ質量の推進剤から得られる速度変化が大きいことを意味します。これにより、搭載する推進剤の量を大幅に削減できるため、衛星の打ち上げ重量を軽減したり、運用期間を延長したりすることが可能になります。

一方で、推力は80mNと比較的小さいですが、電気推進器は長時間連続して運転することで、必要な速度変化（ΔV）を蓄積します。これは、衛星の軌道変更や軌道維持、姿勢制御といった用途に適しています。

推進剤として使用されるキセノンは、比較的分子量が大きく、イオン化しやすく、不活性であることから、電気推進において広く用いられているガスです。

運用と応用

SPT-100を含むホールスラスタは、人工衛星の様々なミッションで活用されています。主に、静止衛星の軌道維持（南北方向および東西方向の補正）、軌道変更、そして姿勢制御などに用いられます。特に、推進剤効率の高さから、ミッション寿命の長期化が求められる通信衛星や放送衛星での採用が多く見られます。

その実績と信頼性から、SPT-100は宇宙推進技術の歴史において重要な役割を果たしてきました。電気推進システムの普及と発展に大きく貢献したモデルの一つとして位置づけられています。

関連技術

電気推進
ホールスラスタ

（注：この記事は提供された情報に基づき、辞書的な記述として再構成したものです。最新の情報や詳細については、開発元などの公式情報を参照してください。）

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