SQL Anywhere

SAP SQL Anywhereについて

SAP SQL Anywhereは、SAP社が提供する関係データベース管理システム（RDBMS）です。旧Sybase社（アイエニウェア・ソリューションズ株式会社）時代から中核製品として開発され、組み込み用途から中小規模のシステムまで幅広く利用されています。

製品の変遷

SAP SQL Anywhereは、その歴史の中でいくつかの名称変更を経てきました。

Watcom SQL（初期）
Sybase SQL Anywhere
Sybase Adaptive Server Anywhere
Sybase SQL Anywhere Studio

これらの製品名でリリースされてきた背景があります。

主な機能

SAP SQL Anywhereは、多様なプラットフォームに対応しており、Windows、macOS、Linux、各種UNIX、そしてRaspberry Piなどの組み込み環境でも動作します。データベースは最低2つのファイルで構成され、これらのファイルはプラットフォーム間で互換性があるため、異なる環境への移行が容易です。また、ODBC、JDBC、ADO.NET、ODataといった一般的な接続インターフェースに加え、PHPやPerl用のライブラリも提供されています。

データベースエンジンには、ストアドプロシージャ、トリガー、参照整合性、行レベルロック、データレプリケーション、高可用性、データ連携、インメモリ機能、イベント機能など、エンタープライズ向けデータベースに匹敵する機能を搭載しています。SQLの記述には、独自のSQL Anywhere SQL（Watcom SQL）とSybase ASE互換のTransact SQLの2つの書式が利用可能です。データの格納やクライアント・サーバー間の通信は暗号化による保護が可能です。組み込みや中小規模利用を考慮し、スループットを最大化するための自動チューニング機能も備わっています。また、インストーラー不要で、実行ファイルとライブラリをコピーするだけで配布できる手軽さも特徴です。

データ同期テクノロジーであるMobiLinkは、他の大規模RDBMSシステムとの差分ベースのデータレプリケーションを提供します。

利用シーン

SAP SQL Anywhereは、組み込みデータベースとして、アプリケーションのデータストアとして広く利用されています。具体的には、中小規模の業務パッケージ、ネットワーク管理ツール、バックアップシステム、ハンディターミナル、POSレジなど、幅広い分野で使用されています。最小限の管理で運用できる点が特徴で、組み込み機器やモバイル環境から中小企業のデータベースサーバーまで、様々な用途に対応できます。また、データ同期技術を活用し、エッジ側で一時的にデータを保管する用途にも適しています。

含まれる製品

SAP SQL Anywhereには、以下の製品が含まれており、個別に購入することも可能です。

SQL Anywhere: 上記で説明したRDBMS本体。
Ultralite: SQL Anywhereからデータベースサーバー機能を削除し、フットプリントを削減したサブセット版。アプリケーションに組み込んで利用されることが多く、スマートフォン(iOS/Android)やスペックの低い機器での利用を想定。
Mobilink: SAP HANA、SAP ASE、SQL Anywhere、その他RDBMS間でデータ同期を行うミドルウェア。セッションベースのデータ同期であり、リアルタイム同期には向かない。本社と支社間、店舗サーバーとPOSレジ間でのデータ集配信に利用。
SQL Remote: Mobilinkと同様にRDBMS間でのデータ同期を行うミドルウェア。データの送受信にメッセージまたはファイルを使用する。Mobilinkが後継製品として位置づけられている。

歴史

Version 3 (1992年): Watcom SQLとして初リリース。
1993年: Powersoft社によるWatcom社買収。Watcom SQLはPowerBuilderにバンドル。
Version 4 (1994年): ストアドプロシージャ、データベーストリガーが追加。
1995年: Powersoft社がSybaseに買収。Watcom SQLはSQL Anywhereに名称変更。
Version 5 (1995年): SQL Remote、GUI管理ツールを追加。
Version 6 (1998年): Adaptive Server Anywhere (ASA)に名称変更。複数プロセッササポート、Javaオブジェクトのサポート。
Version 6.0.2 (1999年): MobiLink、Palm OS、Windows CE向けにUltraLiteが追加。
Version 7 (2000年): 動的キャッシュ管理、タスクスケジューリング、イベントハンドリング、新規管理ツールを追加。
Version 8 (2001年): オプティマイザの改良、データ暗号化と通信の暗号化。
Version 9 (2003年): インデックスコンサルタント、組み込みHTTPサーバ機能の追加。
Version 10 (2006年): SQL Anywhereに再度名称変更。高可用性機能、内部並列処理、マテリアライズドビューを追加。
Version 11 (2008年): フルテキスト検索機能、BlackBerryをプラットフォームに追加。
Version 12 (2010年): 地理データ機能を追加。
Version 16 (2013年): セキュリティアーキテクチャを刷新。
Version 17 (2015年): SAPから初のリリース。製品名称がSAP SQL Anywhereとなる。

外部リンク

公式ウェブサイト
* SAP SQL Anywhere （日本語）

もう一度検索