SRB-3

SRB-3：日本の次世代固体ロケットブースター

SRB-3は、IHIエアロスペースが開発した固体ロケットブースターです。H3ロケットや、将来のイプシロンSロケットにおいて重要な役割を担う推進システムとして注目されています。SRB-Aの後継機として、数々の改良が加えられ、性能向上とコスト削減の両立が図られています。

SRB-Aからの進化

SRB-3は、H-IIA/Bロケットやイプシロンロケットで実績のあるSRB-Aをベースに開発されました。全長はSRB-Aの15.1mから若干短い14.6mですが、これはノーズコーン等の設計変更によるものです。モーターケースの寸法はSRB-Aとほぼ同じですが、推進薬量は約1トン増加し、打ち上げ能力の向上に貢献しています。

特に注目すべきは燃焼パターンの最適化です。SRB-Aでは、ロケットの運用形態（ブースター本数）によって異なる燃焼パターンが用いられていましたが、SRB-3では、運用形態に関わらず最適なパターンに一本化されました。これにより、設計や運用管理が簡素化され、信頼性の向上が期待できます。

新たな技術と設計

SRB-3では、様々な技術革新が導入されています。まず、モーターケースの製造において、従来は外国製の装置とライセンスに依存していましたが、SRB-3では国産技術への完全移行が実現しました。これにより、ライセンス料の削減だけでなく、設計や材料選定の自由度が大幅に向上しました。

また、SRB-AではCFRP製モーターケースの強度上の問題から、複雑な接続構造が採用されていました。しかし、SRB-3では、スラストピンによる直接接続方式と火薬式分離機構の採用により、接続部数を大幅に削減。これにより、軽量化と信頼性向上が図られています。このシンプルな接続方式は、大型ブースターとしては世界初の試みです。

さらに、推進薬のバインダー変更、振動低減のための推力パターン最適化、製造工程の自動化など、様々な改良が施されています。これらの技術革新により、SRB-3はSRB-Aと比較して、コストの削減と軽量化を同時に達成しています。

イプシロンロケットとの技術連携

SRB-3の開発には、イプシロンロケットの第2段モーターであるM-35で実績のある技術がフィードバックされています。具体的には、モーターケース内面断熱材の積層構造の簡素化やノズルスロート材料の製造方法の効率化技術が適用されています。

さらに、SRB-3で得られた知見は、将来のイプシロンSロケットの第1段モーター設計にフィードバックされ、両者の部品共通化が進められています。ただし、イプシロンSロケットの第1段モーターは、SRB-3と異なりノズル可動式である点が異なります。

試験と将来展望

2019年と2020年には、SRB-3の認定型モーター地上燃焼試験が実施され、高い信頼性が確認されています。2回目の試験では、イプシロンロケット用の可動ノズル試験も併せて実施されました。SRB-3は、H3ロケットの補助ブースターとして、そして将来のイプシロンSロケットの第1段モーターとして、日本の宇宙開発を支える重要な推進システムとして活躍することが期待されています。

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