SS (バンド)

SS（エスエス）：京都発、日本のパンク黎明期を疾走したバンド

SSは、1970年代後半に京都で結成されたパンクバンドです。ロンドン・パンクの影響を受け、日本のパンクシーンの初期から活動を開始しました。その特徴は、1980年代のハードコアパンクを先取りするような、目にも留まらぬ高速な演奏スタイルでした。

メンバー

ボーカル: トミー
ギター: しのやん（篠田純）
ベース: ツヨシ（竹埜剛）
ドラム: タカミ（磯野隆臣）

結成と初期の活動

1978年、定時制高校の軽音楽研究会で出会った篠田とトミーを中心にSSは結成されました。当時、2人はパンク・ファンジン『チャイニーズ・クラブ』を発行していました。ギターを始めて間もない篠田でしたが、京都大学西部講堂でのライブでデビュー。初代フリクションのライブに衝撃を受けます。技術力不足を補うため、演奏スピードを極限まで高めることを追求。「ワン・ツー・スリー・フォー!」の掛け声とともに、1曲1分足らずで終わる超高速演奏を繰り返すスタイルを確立し、「ラモーンズよりも速い」と評されました。

『ロッカーズ』への参加と関西NO WAVE

1978年末には東京へ進出。S-KENスタジオのクリスマス・ギグや下北沢ロフトのライブに参加し、その初期衝動あふれる演奏は、東京ロッカーズのドキュメンタリーを制作していた津島秀明の目に留まりました。その結果、彼らのライブ演奏が急遽撮影され、映画『ロッカーズ』に2曲収録されることになります。ステージ衣装として着用していたカンフーの道衣は、ファッション関係の仕事をしていたトミーが香港で購入したものでした。

1979年3月には、ULTRA BIDE、アーント・サリー、INUなどと共に東京ライブツアー「関西NO WAVE」を敢行。この企画名は、ニューヨークのノー・ウェーブに由来し、当時メジャーレーベルが注目していた「東京ロッカーズ」「東京ニューウェイヴ」といった東京のパンク・ニューウェイヴシーンを意識したものでした。

解散、そしてその後

1980年代に入り、ザ・ノーコメンツ、INU、ZIGZAGなど関西のパンク・ニューウェイヴシーンからもメジャーデビューするバンドが現れましたが、トミーが脱退したSSは既に解散していました。

篠田はその後、磯野と『チャイニーズ・クラブ』、ファンといったバンドを経て、コンチネンタル・キッズを結成。ランコをメンバーに迎えました。篠田とランコは、ライブハウスへの出演が困難だったパンク・ウェイヴ系バンドのための企画団体「ビートクレイジー」の中心メンバーとして、関西のアンダーグラウンドシーンを支えました。ランコの死後も、篠田はROCK A Go Go パラダイス企画としてインディーズ・バンドの音源リリースなど、アンダーグラウンド音楽活動を継続しています。磯野はコンチネンタル・キッズ脱退後、2008年にバンド活動を再開し、ZINGI & THE HUNGERに加入しました。

「スピード・パンク」とハードコアへの影響

1980年代にアメリカやイギリスでハードコア・パンクが誕生しますが、シンプルなパンクを高速で演奏するスタイルがいつ、どこで始まったのかは定かではありません。SSは1978年の時点で同様のスタイルを確立しており、日本のバンドとしては特筆すべき存在です。SS解散後、メンバーは演奏スタイルを変えているため、彼らをハードコア・パンクの元祖と断定することはできませんが、ハードコア・スタイルが同時多発的に生まれた可能性を示唆する事例と言えるでしょう。

ディスコグラフィ

活動期間中にオリジナルアルバムやシングルのリリースはありませんでしたが、ライブ盤がいくつか発売されています。

The Original SS（1984年） - ライブアルバム
LIVE!（1990年、2001年、2007年） - ライブアルバム
* 日本高速音楽伝説 序章（2003年） - ライブ音源集

映画『ロッカーズ』には、彼らの演奏が収録されています。

SSは短い活動期間でしたが、日本のパンクシーンに強烈なインパクトを残し、その音楽性は後続のバンドに影響を与えました。彼らの音楽は、日本のパンク史において重要な位置を占めています。

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