STARLIGHT (吉井和哉のアルバム)

『STARLIGHT』は、シンガーソングライター吉井和哉の通算7枚目となるオリジナルアルバムです。2015年 3月18日に、彼にとってかつてTHE YELLOW MONKEYの所属レーベルでもあった日本コロムビア内の「TRIAD」レーベルへ移籍後、初の作品としてリリースされました。

解説

オリジナルアルバムとしては、前作『The Apples』以来、約4年ぶりとなる本作は、同時期に制作されたカバーアルバム『ヨシー・ファンクJr. 〜此レガ原点!!〜』と密接な関係にあります。カバーアルバムで洋楽のルーツを探求した経験が、本作ではその原点を消化し、自身の音楽へと昇華させるという形で色濃く反映されています。

カバーアルバム制作で得た手応えは、次作へのプレッシャーにも繋がったといいます。特に、50代という新たな年代を迎えるにあたり、自身の音楽や歌詞でどのような姿を描くべきか深く悩んだ時期があったそうです。しかし、アルバムが完成し改めて聴き返した時、そこには幼少期、THE YELLOW MONKEY時代、そしてソロアーティストとしてのこれまでの歩みが自然に溶け合い、融合した、かつてない新しい吉井和哉像が表現されていることに気づかされたといいます。

アルバムのアートワークは、先行シングル『クリア』に続き、糸山泉氏がデザインを担当しました。また、プロモーションとして、通常は都心部のみで行われるアドトラックの走行を、本作では1台のアドトラックが全国11都市を巡り、収録曲全曲を流すという「STARLIGHT“一番星”TOUR」が実施され、大きな話題となりました。さらに、シングル『クリア』とのW購入者特典として、抽選で2000名に吉井和哉本人の手形レプリカがプレゼントされる企画も行われました。

楽曲について

本作には、様々なモチーフや制作背景を持つ楽曲が収録されています。アルバムタイトルにもなったリードトラック「(Everybody is)Like a Starlight」は、ミュージックビデオも制作されました。

時代劇をイメージしたという「Hattrick'n」は、元々「くのいち」という仮タイトルがあり、その後「ハットリ君」を経て現在の名称に落ち着きました。その読み方は「ハットトリッキン」です。

「You Can Believe」は、当初ファンタジー色の強い歌詞が書かれたものの、年齢的に無理があると感じて一度断念。その後、「思いつく言葉がない」という状況から逆にインスピレーションを得て歌詞を書き直したところ、言葉が溢れ出るように完成したというエピソードがあります。

Vシネマのタイアップを意識して制作されたのが「紅くて咲こうとした恋の」です。

俳優・山田孝之のドキュメンタリードラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』のエンディングテーマとして使用された「TOKYO NORTH SIDE」は、作詞を山田孝之本人が担当。山田氏が持ち込んだ詞に吉井が曲をつけた共作で、ドラマで使用されたバージョンでは山田氏が歌唱し、吉井が演奏全てを担当しています。

「迷信トゥゲザー」は、ビートルズの「カム・トゥゲザー」とスティーヴィー・ワンダーの「迷信」という、洋楽史に残る名曲をモチーフとしています。

「Route69」は、『ヨシー・ファンクJr.』と並行して制作された影響もあり、昭和歌謡を意識した楽曲となっています。

若者へ向けたパンク・ロックバンド、例えばラモーンズやダムドのようなイメージで作られた「Step Up Rock」は、人生の半ばに立つ吉井が、過去と未来を見据えながら今の少年たちに歌いかけるというコンセプトを持ちます。吉井自身は、このような楽曲を親しみを込めて「老（おい）パンク」と呼んでいるそうです。歌詞には、吉井の10代の頃の原体験が綴られています。

ジョン・レノンの楽曲「マザー」をモチーフにした「STRONGER」は、吉井曰く、幼い頃の自身を引き出して歌わせたような楽曲です。曲の終盤に挿入される音は、ある賛美歌の動画音声を使用しており、曲頭から動画と同時に再生し、途中から音声を混ぜることで独特な音像が生まれたといいます。

アルバムのラストを飾る「クリア」は、13枚目のシングル曲です。吉井和哉のソロ作品において、シングル曲がオリジナルアルバムの最後に配置されるのは本作が初めてのこととなりました。

本作には、国内外の著名なミュージシャンが多数参加しており、アルバムサウンドに深みを与えています。

初回限定盤には、2014年12月28日に日本武道館で行われたライブ「YOSHII KAZUYA SUPER LIVE 2014 ～此コガ原点!!～」の映像を収録したDVDが付属しました。

『STARLIGHT』は、キャリアを重ねたアーティストが自身のルーツと現在、そして未来を見つめ直し、新たな表現を獲得した重要な作品と言えるでしょう。

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