ShareLaTeX

ShareLaTeXは、ウェブブラウザを通じてアクセスし、LaTeX文書を作成・編集できるオンラインサービスでした。従来のデスクトップ上で動作するLaTeXエディタとは異なり、サーバー側で処理が行われ、ユーザーはインターネット接続があれば場所を選ばずに作業を進めることができました。複数人が同時に同じ文書を編集し、その変更がリアルタイムに共有される共同編集機能や、記述したLaTeXコードからPDF形式の文書を生成する機能などを主要な特徴としていました。

このサービスは、自身のコンピュータに専用のソフトウェアをインストールする必要がない、サーバー型のアプリケーションとして提供されました。利用者はウェブブラウザさえあれば、どのデバイスからでも手軽にLaTeXの編集環境を利用できるという利便性がありました。ShareLaTeXは公式にホストされているインスタンスが提供されており、ウェブサイト（かつてはsharelatex.com）を通じて広く利用されていましたが、サービスを構成するソフトウェア自体はオープンソースライセンスの下で公開されており、技術的な知識を持つユーザーであれば独自のサーバー上にShareLaTeX環境を構築することも可能でした。

ShareLaTeXは、後に同種のオンラインLaTeX編集サービスであるOverleafによって買収されることとなります。この買収は2017年7月20日に発表され、その後ShareLaTeXのサービスはOverleafへと統合されていきました。

サービスの提供モデルとしては、基本的な機能を無料で利用できるフリーミアム形式が採用されていました。無料アカウントや自身で構築したオープンソース版のインスタンスでは、以下のような機能が利用可能でした。

作成したプロジェクトの公開設定（非公開または公開）
一つのプロジェクトに対して最大2名までの共同編集者がリアルタイムで同時に作業できる機能
記述内容のスペルチェック機能
簡単な操作でLaTeXコードをPDF文書に変換する機能

一方、有料プランを契約することで、さらに高度な機能が利用できるようになりました。これにより、より大規模なチームでの作業や、より詳細な管理、外部サービスとの連携などが可能となりました。有料プランで提供された主な追加機能は以下の通りです。

文書に加えられた変更を追跡し、誰がいつどのような修正を行ったかを確認できる変更履歴機能
クラウドストレージサービスであるDropboxとの連携によるファイル同期
バージョン管理システムであるGitHubとの連携によるプロジェクトの同期
過去の編集状態に戻ることができる文書のバージョン履歴機能
* 有料プランの種類に応じて、3名以上のより多くの共同編集者が参加できる機能

技術的な側面を見ると、ShareLaTeXはウェブサービスのフロントエンド（ユーザーがブラウザで操作する部分）と、サーバー側で動作するアプリケーションの両方で、Node.js実行環境を基盤としていました。これらのプログラムは主にCoffeeScriptというプログラミング言語で記述されていました。データの保存には、柔軟性の高いドキュメント指向データベースであるMongoDBが使用され、高速なデータアクセスやキャッシュ管理にはインメモリデータ構造ストアであるRedisが利用されていました。また、データ分析に用いられるR言語との連携機能も有しており、特にRの文書生成パッケージであるKnitrを通じて、Rコードの結果をLaTeX文書内に埋め込むといったことが可能でした。

ShareLaTeXと同様に、ウェブ上でLaTeX文書の編集や共同作業を可能にするサービスとしては、買収元となったOverleafや、日本国内で提供されているCloud LaTeXなどが存在します。これらのサービスも、ShareLaTeXと同様のオンラインLaTeX環境という共通のコンセプトを持っています。

ShareLaTeXは、LaTeX特有の複雑な環境構築の手間を省き、特に共同での文書作成において大きな利便性を提供するサービスとして多くのユーザーに利用されていました。その技術的な特徴や提供モデルは、その後のオンライン共同編集サービスの発展にも影響を与えたと言えます。Overleafへの統合を経て、その機能や思想は現在のサービスへと引き継がれています。

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