Small Basic

Microsoft Small Basic

Microsoft Small Basicは、マイクロソフトが開発した、主にプログラミング学習のために設計された言語環境です。その名称が示す通り、BASIC言語の流れを汲んでいますが、マイクロソフトの著名な開発ツールであるVisual Basicとは明確な違いがあります。

概要

Small Basicは、Visual Basicと同様にBASIC言語の思想を受け継いでいますが、その位置づけは大きく異なります。Visual Basicは、オブジェクト指向プログラミングをサポートし、エンタープライズレベルのアプリケーション開発から個人向けのユーティリティまで、幅広い用途に対応できる本格的な開発言語へと進化しました。その過程で機能拡張が進み、特に.NET Frameworkに対応したVB.NET以降は、文法や概念が複雑化し、プログラミング未経験者にとっては習得のハードルが高くなっていました。

これに対し、Small Basicは「プログラミング入門」という目的に特化しています。オブジェクト指向の概念は意図的に排除され、使用できる命令や文法は最小限に絞り込まれています。これにより、プログラミング学習者が直面しやすい複雑さを取り除き、基本的な概念を容易に理解できるよう設計されています。非常に分かりやすいインターフェースとシンプルなコマンド体系により、プログラミングの最初のステップを踏み出すのに適した環境が提供されています。

歴史

Small Basicプロジェクトは、2008年10月にマイクロソフトによって初めて発表されました。その後、開発段階を経て、多数のコミュニティ技術プレビュー（CTP）版が公開され、ユーザーからのフィードバックが開発に反映されました。最初の安定版となるバージョン1.0は、2011年7月12日にマイクロソフトの開発者向けプラットフォームであるMSDN（Microsoft Developer Network）上で正式にリリースされました。このリリースと同時に、初心者向けの学習カリキュラムや入門ガイドなどの豊富な学習リソースも提供が開始されました。

数年間の期間を経て、Small Basicは改良が続けられました。2015年3月27日にはバージョン1.1がリリースされました。このバージョンでは、いくつかのバグ修正が行われたほか、対応する.NET Frameworkのバージョンが従来の3.5から4.5に更新されました。この変更により、より新しい技術基盤上で動作するようになりました。

続いて、2015年10月1日にはバージョン1.2が登場しました。このアップデートは、バージョン1.1から約半年後、そしてバージョン1.0のリリースからは約4年ぶりとなる機能追加を含む重要な更新でした。バージョン1.2では、マイクロソフトのモーションセンサーデバイスであるKinectを操作するための新しいクラスが追加され、Small BasicでKinectを活用したプログラムを作成することが可能になりました。また、辞書機能において多くの言語が新たにサポートされ、国際的なユーザーにとってより利用しやすくなりました。加えて、このバージョンでも複数のバグ修正が含まれていました。

さらに進化は続き、2019年2月19日には「Small Basic Online」（SBO）が発表されました。これは、従来のデスクトップアプリケーション版とは異なり、ウェブブラウザ上でSmall Basicのプログラムを作成・実行できるオンライン環境です。Small Basic Onlineはオープンソースソフトウェアとして開発され、GitHub上で公開されるとともに、MITライセンスの下で利用できるようになりました。これにより、ユーザーはインストール不要で手軽に利用でき、コミュニティによる開発への参加も可能となりました。

Small Basicは、その設計思想と継続的な開発により、世界中のプログラミング入門者にとって、最初のコーディング体験を楽しく、かつ分かりやすいものにするための有効なツールとして利用されています。

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