SpursEngine

SpursEngine（スパーズエンジン）とは

SpursEngineは、東芝が開発したマルチメディア処理に特化したプロセッサです。Cell Broadband Engine（以下Cell）をベースにしており、その特徴を受け継ぎつつ、特定の用途に最適化されています。主に、動画のエンコード・デコード処理能力を向上させるために設計されました。

基本構造

SpursEngineは、Cellに搭載されているSPE（Synergistic Processor Element）をベースにしたプロセッサを4基搭載しています。これらのSPEは、1.5GHzのクロックで動作し、マルチメディア処理に特化しています。また、H.264やMPEG-2のハードウェアエンコーダ・デコーダを内蔵しており、これらのコーデックを用いた動画処理を高速に行うことができます。

東芝のQosmioシリーズの一部や、PCI Express接続のアクセラレータカードに搭載されていました。特に、動画編集や再生において、CPU単体での処理よりも大幅な速度向上が期待できました。

特徴

マルチメディア処理に特化: SpursEngineは、通常の汎用プロセッサが苦手とするマルチメディア処理に特化して設計されています。浮動小数点演算能力は48GFLOPSと高く、特に動画処理においてはその性能を発揮します。
ハードウェアエンコーダ・デコーダ: H.264・MPEG-2のハードウェアエンコーダ・デコーダを搭載しており、フルHDの動画処理もスムーズに行うことができます。これにより、CPUの負荷を軽減し、より効率的な動画処理が可能になります。
低消費電力: 65nmバルクプロセスで製造され、消費電力は20W以下に抑えられています。これは、モバイル環境での利用を考慮した設計です。トランジスタ数は2億3910万個、ダイサイズは102.89mm²です。また、SPEのレイアウトを最適化することで、オリジナルのSPEと比較してダイサイズを27%縮小しています。

プロセッサアーキテクチャ

CellではPPE（Power Processor Element）が中心的な役割を果たしていましたが、SpursEngineではPPEを搭載していません。代わりに、東芝独自の32ビットCPUである「Control Processor」がPPEの役割を代替しています。Control Processorは、PPEほど複雑な処理は行いませんが、PCIeを通じてホスト側との連携を行います。

内部バスには、Cellと同様のEIB（element interconnect bus）が採用されています。ただし、動作周波数はCellの約4GHzに対して、SpursEngineでは1.5GHzとなっています。メモリはXIOを使用し、XDR DRAMに対応しています。Qosmioシリーズでは、128MBのメモリが搭載されていました。

ロードマップ

東芝は、SpursEngineをコンシューマ向けの省電力・低コスト版Cellの第一弾として位置付けていました。当初の計画では、45nmプロセスでシュリンクしたSpursEngine IIの開発や、さらに低消費電力なモバイル版のCell（micro Cell）の開発も視野に入れていました。

沿革

2007年9月20日: 東芝がSpursEngineを発表。
2008年6月23日: SpursEngineを搭載したノートパソコン「Qosmio G50/F50」が発売。
2008年7月18日: CRI・ミドルウェアがSpursEngine向けミドルウェアの提供を開始。
2008年7月25日: 東芝セミコンダクターが「SpursEngine Developers Forum 2008」を開催。
2008年11月: SpursEngine搭載のPCI Express接続アクセラレータカードが発売。
2008年11月26日: CRI・ミドルウェアがSpursEngine向けコンソールツール「CRI SpursCoder」を公開。

関連情報

SpursEngineは、Cell Broadband Engineの技術を応用したものであり、プレイステーション3にも搭載された技術がベースとなっています。東芝は、この技術をコンシューマ向けの製品に展開し、高性能なマルチメディア処理を身近なものにしようとしました。

外部リンク

SpursEngine スペシャルサイト

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