Strange Circus 奇妙なサーカス

Strange Circus 奇妙なサーカス

『Strange Circus 奇妙なサーカス』（ストレンジ サーカス きみょうなさーかす）は、2005年に製作された日本の長編映画です。鬼才・園子温が監督・脚本・音楽を手がけ、その衝撃的かつ特異な世界観からR18+指定を受けています。人間の心の闇、歪んだ家族関係、そして現実と虚構の境界を、アブジェクトな映像美で描き出した問題作として知られています。

概要

本作は、近親相姦、児童虐待、身体改造といった社会的なタブーに深く切り込んだインモラルな官能ミステリーです。公開時のキャッチコピー「父に抱かれているとき、私の中に母が宿る」が示すように、登場人物たちの精神的な倒錯と、それに伴う肉体的な変容が重要なテーマとなっています。また、女優の宮崎ますみが本作で約12年ぶりに映画の世界へ復帰したことも大きな話題となりました。

ストーリー

物語は、二重構造で展開されます。まず、物語の中心となるのは、ある女性作家が書いた小説の内容です。この小説では、幼い頃に実の父親から性的虐待を受け、心に深い傷を負った少女・美津子の壮絶な運命が描かれます。さらに、娘への激しい嫉妬心から虐待を繰り返す母親との間で、美津子の心が次第に母親と一体化していくという、倒錯的な心理が綴られています。ある日、美津子は母親からの暴力から逃れるために、思わず母親を階段から突き落として殺害してしまいます。

しかし、この凄惨な出来事が描かれた物語が、車椅子生活を送る人気作家・三ッ沢妙子の創作したフィクションなのか、それとも彼女自身の忌まわしい過去を基にした自伝なのかは曖昧なままです。出版社の編集者である田宮雄二は、編集長からの指示を受けて妙子の担当となり、彼女の身辺を調査し始めます。田宮は、妙子の作品に描かれた世界と現実との繋がりを探る中で、作家の秘密、そして彼女の過去に隠された衝撃的な真実へと近づいていきます。物語は、小説のパートと現実のパートが巧みに交錯し、観る者は何が真実で何が虚構なのかを見極めようと翻弄されます。

キャスト

主要なキャストとして、物語の鍵を握る女性作家・三ッ沢妙子（および小説内の尾沢小百合）を宮崎ますみが演じ、強烈な印象を残しました。妙子の担当編集者・田宮雄二役にはいしだ壱成。悲劇の少女・美津子の幼少期を桑名里瑛が、思春期以降を高橋真唯が演じ分けました。その他、個性的な俳優陣が出演しており、不二子、マダム・レジーヌ、田口トモロヲ、大口広司などが脇を固めています。

スタッフ

監督、脚本、そして音楽という重要なパートを園子温が一手に担い、作品全体のトーンを決定づけています。美術面では、コスチュームディレクターの松本智恵子、コスチュームアートディレクションのピュ〜ぴる、コルセット&フォーマルスタイルアドバイザーの緑川みらのなど、作品のテーマに沿った特殊な衣装や造形に関わるスタッフが参加しています。特殊メイク・造型は西村喜廣が担当し、作品の視覚的なインパクトを高めています。

受賞歴・評価

『Strange Circus 奇妙なサーカス』は、国内外の映画祭で高い評価を受けました。特に、第56回ベルリン国際映画祭フォーラム部門では、ベルリン新聞・読者審査賞を受賞しました。また、カナダのファンタジア国際映画祭2006では、作品賞と主演女優賞（宮崎ますみ）を受賞し、その独創性と表現力が国際的に認められました。その他、東京国際ファンタスティック映画祭2005や第10回釜山国際映画祭でも正式上映作品として選出されています。

本作は、その過激な内容ゆえに物議を醸しましたが、園子温監督の作家性、キャスト・スタッフの情熱、そして人間の深淵を描き出す試みとして、日本のインディーズ映画史において重要な作品の一つとされています。

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