Su-27-1M
Su-27-1M(
ウクライナ語: Су-27-1М)は、旧ソビエト連邦時代に
スホーイ設計局によって開発された傑作戦闘機Su-27を、
ウクライナ国内で独自の近代化改修を施した機体です。
ウクライナの
ザポリージャ航空機修理工場が中心となり、既存のSu-27ファミリーの寿命延長と戦闘能力の向上を目指して開発されました。
概要
ウクライナにおけるSu-27近代化改修計画は、老朽化が進む保有Su-27シリーズの機体寿命を延ばし、同時にその作戦能力を現代の戦場に適応させることを目的として、
2013年に開始されました。この改修により、対象機の戦闘能力は改修前と比較して約20%向上すると期待されていました。
改修作業の初号機となったのは、複座の練習機型であるSu-27UBでした。この機体はSu-27UB1Mと命名され、
ザポリージャ州の
ザポリージャ航空機修理工場にて改修作業が進められました。この計画には、
ザポリージャ航空機修理工場のほか、オリゾン・ナビゲーション、ノヴァトール、エレクトロンプリボールといった
ウクライナ国内の複数の企業が協力して携わっています。
2014年8月5日付けの国防大臣令第299号により、Su-27の近代化改修型は正式に
ウクライナ空軍の装備として採用されることが決定しました。これにより、単座型のSu-27PおよびSu-27S、そして複座型のSu-27UBおよびSu-27UPが、それぞれ近代化改修の対象となりました。改修を終えた機体の引き渡しは順次行われ、2020年1月31日には、改修型Su-27UB1Mの最初の1機が
ウクライナ空軍へ納入され、第831戦術航空旅団に配備されています。
機体改修内容
Su-27-1Mへの近代化改修では、機体の主要なアビオニクスを中心にアップデートが行われました。特に、機首に搭載されるN001パルス・ドップラーレーダーは、受信ユニットやデジタル処理ユニットなどが換装され、性能向上を図っています。このレーダー改修の結果、目標の捜索可能距離は約30%延伸し、同時に敵の電子妨害に対する抵抗力(対電子戦能力)も強化されました。
その他にも、オリゾン・ナビゲーション製のSN-3307-02衛星航法システム受信機が新たに装備され、航法精度が向上しています。また、同じくオリゾン・ナビゲーション製のA-511
トランスポンダ、飛行中の各種データを記録するBUR-4-1-10-01フライトデータレコーダー、コックピットの映像などを記録するSAVR-27U映像記録装置といった最新のアビオニクスも搭載されました。
しかしながら、この改修型は、同じSu-27をベースとした他国の近代化改修型と比較すると、一部の能力において差が見られます。例えば、ロシア空軍のSu-27SM/SM3やベラルーシ空軍のSu-27UBM1のような改修型とは異なり、R-77(AA-12アダー)のような最新の
空対空ミサイルや、Kh-29(AS-14ケッジ)、Kh-31(AS-17クリプトン)といった空対地・
空対艦ミサイルの運用能力は付与されていません。このため、純粋な
マルチロール機としての能力は限定的であり、主に防空戦闘機としての役割に特化した改修と言えます。
派生型
原型機の型式に応じて、以下の派生型が存在します。
Su-27P1M: Su-27Pの近代化改修型。
Su-27S1M: Su-27Sの近代化改修型。
Su-27UB1M: Su-27UB(複座練習機型)の近代化改修型。
Su-27UP1M: Su-27UP(複座戦闘機型)の近代化改修型。
運用国
本機を運用しているのは、改修を実施した
ウクライナ
ウクライナ空軍
のみです。
ウクライナは、Su-27-1Mの他にも、L-39M1、MiG-29MU1/MU2、Su-25M1など、旧ソ連時代の主要な
航空機に対し、独自の近代化改修を積極的に進めています。