Sun Fire

概要

Sun Fire（サン・ファイア）は、かつて存在したサン・マイクロシステムズ社が2001年に市場に投入したサーバコンピュータの製品群です。この名称は、同社のそれまでの主力サーバであったSun Enterpriseシリーズの後継として位置づけられました。

当初、Sun Fireシリーズは、サン・マイクロシステムズが自社開発した高性能プロセッサであるUltraSPARC IIIを主要な演算ユニットとして採用していました。UltraSPARC IIもまたサン自社開発のプロセッサであり、前世代のEnterpriseシリーズで使用されていました。Sun Fireの登場は、サンがサーバ市場におけるリーダーシップを維持するための重要な一歩でした。

プロセッサ構成の多様化

Sun Fireブランドは、時間の経過とともにサポートするプロセッサの種類を拡大しました。2003年には、インテル社のIntel Xeonプロセッサを搭載したモデルが登場し、製品ラインナップにx86アーキテクチャが加わりました。さらに2004年には、AMD社との提携の成果として、AMD Opteronプロセッサを搭載したモデルが発売されました。これにより、Sun Fireは単一のアーキテクチャに限定されない、より広範な顧客ニーズに対応できるブランドへと変貌しました。同年には、サン自社開発のデュアルコアプロセッサ、UltraSPARC IVを搭載したモデルも発表され、SPARCアーキテクチャの性能向上も進められました。2007年以降も、Intel Xeon搭載モデルとAMD Opteron搭載モデルは引き続き提供されました。

サポートされるオペレーティングシステム

Sun Fireサーバは、搭載されるプロセッサアーキテクチャに応じて、様々なオペレーティングシステム（OS）をサポートしていました。

UltraSPARCベースモデル: 主にサン独自のSolarisオペレーティングシステム、具体的にはバージョン8、9、10が公式にサポートされていました。これらに加え、非公式ながらサードパーティによってLinux、OpenBSD、NetBSDといったオープンソースOSも利用可能でした。
Intel XeonおよびAMD Opteronベースモデル: これらのx86/x64アーキテクチャを採用したSun Fireサーバは、より幅広いOSに対応しました。Solaris 9および10に加え、主要なエンタープライズLinuxディストリビューションであるRed Hat Enterprise Linux（バージョン3から6）やSUSE Linux Enterprise Server（バージョン10および11）がサポートされました。また、Microsoft Windows Server製品も動作し、Windows 2000 Server、Windows Server 2003、Windows Server 2008、および2008 R2が公式にサポートOSリストに含まれていました。OpenBSDもこれらのモデルでサポートされていました。

モデル体系とブランドの変遷

Sun Fireサーバのモデル番号には、そのシステムの種類を示す接頭辞が付与されていました。

V: エントリーレベルおよびミッドレンジのラックマウント型およびキャビネット型サーバ。UltraSPARC、IA-32（Intel x86）、またはAMD64プロセッサを搭載しました。
E: 高可用性機能を備えた、エンタープライズ向けのハイエンドキャビネット型サーバ。主にUltraSPARCプロセッサを搭載しました。
B: ブレードサーバ。UltraSPARCまたはIA-32プロセッサ搭載モデルが存在しましたが、後にサン社のブレードシステムはSun Bladeブランドに移行しました。
X: ラックマウント型のx86-64（Intel/AMD）ベースのサーバ。
* T: サン独自のUltraSPARC Tシリーズ（CoolThreadsプロセッサ）に基づく、エントリーレベルおよびミッドレンジのラックマウント型サーバ。後のモデルはSPARC Enterprise Tとしてブランド化されました。

初期には、Intel Xeon搭載モデルを識別するためにモデル番号に接尾辞「x」を、AMD Opteron搭載モデルには「z」を使用する慣例がありましたが、この規則は後に廃止されました。接尾辞「z」は、特定のモデル（例：V880z Visualization Server）を区別するためにも以前使用されていました。

2007年、サンは富士通および富士通シーメンスと共同で、SPARCベースのサーバ製品に共通ブランド「SPARC Enterprise」を導入すると発表しました。SPARC Enterpriseの初期モデルは、富士通が開発したSun Fire Eシリーズの後継にあたるミッドレンジおよびハイエンドサーバでした。Sun Fire T1000およびT2000サーバもSPARC Enterpriseブランドで販売されるようになりましたが、サンは従来のSun Fire名称での提供も継続しました。その後のUltraSPARC Tシリーズサーバは、Sun FireではなくSPARC Enterpriseブランドでリリースされました。

ブランドの終焉と後継

サン・マイクロシステムズは2009年にオラクル社に買収され、2010年にはその完全子会社となりました。この買収後もSun Fireブランドのサーバは販売が継続されました。SPARCベースのSun Fireシステムは2010年まで製造が続けられ、x86-64ベースのモデルは2012年半ばまでオラクルによって販売されました。

しかし、2012年半ばをもって、オラクルは新しい後継製品の名称にSun Fireブランドを使用することを終了しました。サン・マイクロシステムズによって開発・生産されていた既存のx86-64サーバモデルは、「Sun Server Xシリーズ」へとブランド名が変更されました。

Sun Fireブランドは消滅しましたが、そのサーバ事業の系譜は、オラクルによって「Sun Server」や「Oracle Server」といった新たな名称で引き継がれています。また、SPARCアーキテクチャのサーバ製品は、SPARC Enterpriseブランドを経て、オラクルによるSPARCシリーズへと発展していきました。

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