T40ウイズバン

T40/M17 ウィズバン：戦車搭載型多連装ロケット発射器

T40/M17 ウィズバンは、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が開発・使用した多連装ロケット発射器です。M4シャーマン戦車に搭載され、その火力支援能力を飛躍的に向上させることを目的としていました。

設計

ウィズバンは、箱型のフレーム内に20発の7.2インチロケット弾を搭載する構造でした。この発射器は、戦車の75mm砲の制御システムと連動しており、油圧機構によって俯仰角を調整することができました。緊急時には、発射器全体を投棄し、75mm砲を通常通りに使用することも可能です。

ロケット弾は、1発ずつ発射することも、複数発を同時に発射することもできました。この柔軟な発射方式により、状況に応じた最適な火力支援が可能となりました。T40は「限定的な調達」兵器として扱われ、後に「準制式」に分類されました。

戦歴

ウィズバンの実戦投入は、1944年から1945年の間に行われましたが、その数はごくわずかでした。当初はD-デイでの使用が計画されていましたが、試験の遅延により作戦計画への組み込みが間に合いませんでした。また、試験の結果、ロケット弾の発射が乗員や周囲の兵士にとって危険となる可能性も指摘されました。

1944年には、アメリカ海兵隊がマリアナ・パラオ諸島の戦いでの使用を検討しましたが、実際の作戦で使用されることはありませんでした。その後、陸軍は第743戦車大隊に所属する30両のシャーマン戦車にウィズバンを装備し、1944年12月にベルギーで予定されていた作戦に投入する計画を立てました。しかし、12月16日にドイツ軍がアルデンヌ攻勢を開始したため、T40は前線から撤収され、この作戦は中止となりました。その後、ウィズバンは大戦終結まで北イタリアで使用されました。

戦後、陸軍は余剰となったウィズバンを再利用しようと試み、1,000基の改修キットを承認しましたが、実際に改修されたのはわずか2両に過ぎませんでした。さらなる遅延により、この計画は最終的に放棄されました。

T40（短砲身バージョン）

T40の試作型として、主砲を撤去し、発射器の身管を短縮したバージョンも存在します。撤去された主砲の代わりに、ロケット発射器の俯仰機構が搭載されました。この改造にはM4A2シャーマンが使用され、車体側面には乗員用のアクセスドアが追加されました。

関連項目

T34カリオペ：M4シャーマンにロケット発射器を装備した類似の車両で、4.5インチのM8ロケット弾を発射します。

参考文献

書籍

Anderson, Richard C. (2010) Cracking Hitler's Atlantic Wall: The 1st Assault Brigade Royal Engineers on D-Day. Mechanicsburg, PA: Stackpole Books. ISBN 0-81170-589-7
Berndt, Thomas. (1993). Standard Catalog of U.S. Military Vehicles. Iola, WI: Krause Publications. ISBN 0-87341-223-0.
Chamberlain, Peter; Ellis, Chris (1969) British and American Tanks of World War II New York, NY: Arco Publishing Company. ISBN 0-668-01867-4
Green, Michael (2014) American Tanks & AFVs of World War II. Oxford, UK: Osprey Publishing. ISBN 1-78200-931-0
United States War Department (1945) 7.2-inch Multiple Rocket Launcher M17 Technical Manual. Washington, D.C.: War Department.
* Zaloga, Steven (2012) U.S. Marine Corps Tanks of World War II. Oxford, UK: Osprey Publishing. ISBN 1-78096-032-8

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