TAILORED SONG

郷ひろみ、新たな境地を開拓したラテンアルバム『TAILORED SONG』

1983年12月21日、歌謡界の貴公子・郷ひろみは、CBS・ソニーより21枚目のオリジナルアルバム『TAILORED SONG』（テーラード・ソング）をリリースしました。前作『黄金郷』から約1ヶ月、オリジナルアルバムとしては『比呂魅卿の犯罪』から約8ヶ月ぶりの作品となります。

本作の最大の特徴は、レコーディング場所と選曲にあります。なんと、本作はアメリカ合衆国フロリダ州マイアミで制作されました。郷ひろみのアルバムにおける海外レコーディングは、『SUPER DRIVE』以来8作ぶり。この異国の地で生まれたアルバムは、独特の雰囲気を纏っています。

そしてもう一つの特徴が、全曲フリオ・イグレシアスの楽曲のカヴァーであるということです。イグレシアスは、スペインを代表する世界的歌手のひとり。情熱的なラテンミュージックを得意とする彼の楽曲を、郷ひろみが日本語詞で歌い上げた、大胆な試みと言えるでしょう。

このアルバムを通して、郷ひろみは新たな音楽性を提示しました。それまでのアイドルとしてのイメージにとどまらず、洗練されたラテンミュージックを、自身の個性と見事に融合させています。楽曲の選定、アレンジ、そして郷ひろみ自身の歌唱力によって、イグレシアスの楽曲が、まるで彼のオリジナル曲のように聴こえるのは、素晴らしい成功と言えるでしょう。

アルバムには、多くの豪華な作詞家・作曲家・編曲家が参加しています。日本語詞は、阿久悠氏、竜真知子氏、大岡悦子氏、浅野裕子氏といった、日本を代表する作詞家陣が担当。編曲は、ラファエル・フェッロ氏が手掛けています。彼ら一流のアーティスト達によって、『TAILORED SONG』の世界観はより一層深みを増しています。

中でも49枚目のシングルとしてリリースされた『シャトレ・アモーナ・ホテル』は、このアルバムを象徴する一曲と言えるでしょう。明るく、そしてどこか切ないメロディーは、聴く者の心を掴んで離しません。この曲はアルバムの中でも特に人気が高く、郷ひろみの代表曲のひとつとなりました。

『TAILORED SONG』は、郷ひろみの音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品です。アイドルとしての華やかさだけでなく、アーティストとしての深み、そして挑戦者としての意気込みが感じられる、まさに集大成とも言えるアルバムです。この作品によって、郷ひろみは新たなファン層を獲得し、さらに広い音楽性を追求するきっかけを掴んだと言えるでしょう。

このアルバムを聴けば、ラテン音楽の情熱と、郷ひろみの表現力の豊かさを同時に堪能できます。80年代の音楽シーンを彩る、名盤中の名盤と言えるでしょう。郷ひろみファンはもちろんのこと、ラテン音楽ファン、そして新たな音楽体験を求めるすべての人々に、この『TAILORED SONG』をおすすめします。

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