TARO! TOKYO魔界大戦

『TARO! MOMOTARO IN TROUBLE』

概要

『TARO! MOMOTARO IN TROUBLE』は、1991年5月25日に劇場公開された日本の特撮映画です。本作は、おとぎ話として広く親しまれている「桃太郎」の物語を、現代社会を舞台に大胆に再構築した作品です。物語の中心となるのは、ある新興宗教団体が密かに進める恐ろしい陰謀に、図らずも巻き込まれてしまった複数の中学生たち。彼らが協力し、この巨大な悪意に立ち向かう姿が描かれます。

映画の公開後、VHSビデオソフトとしてリリースされる際に、タイトルが『TARO! TOKYO魔界大戦』へと変更されました。この改題は、当時のビデオ市場における認知度向上や、内容のイメージをより直接的に伝える目的があったと考えられます。

特撮と製作背景

本作の大きな見どころの一つに、特撮技術を駆使して創り出された怪物の存在があります。特に物語の鍵を握る「鬼」は、特殊造形デザイナーである若狭新一氏によってデザイン・造形されました。この鬼のスーツは、従来の怪獣スーツの常識を超えるスケールで製作されており、その全高は驚異の3メートルにも達しました。

巨大な体躯を持つこのスーツには、当時の最新技術が積極的に導入されています。例えば、一部のギミック操作にはラジコン技術が用いられたほか、スーツの軽量化と強度確保のために樹脂製パーツが多用されました。こうした新しい試みは、後の日本の特撮作品にも影響を与えたと言われています。

若狭新一氏によれば、本作の製作が具体的に動き出したのは、若狭氏自身が「とにかく巨大な鬼を作ってみたい」という強い要望を、脚本家の小中千昭氏に伝えたことが発端であったとのことです。クリエイター個人の情熱やアイデアが、作品全体の企画を牽引した稀有な例として語られています。完成した巨大な鬼は、物語のクライマックスにおいて、主人公たちを待ち受ける圧倒的な脅威として強烈な印象を残しました。

キャスト

本作には、若手からベテランまで多彩な俳優陣が出演しています。主人公の中臣太郎を演じたのは藤原秀樹。彼の周囲を取り巻く主要人物としては、紀本肇役に三浦洋一、小林美香役に森山和美、葛城恵役に小野みゆき、堀雅之役に丸典膳カイといった面々が配されました。物語に深みと厚みを与える重要な役どころには、宝伝役の谷啓やローカイ大佐役の竹中直人が出演し、存在感を示しています。また、タレントやミュージシャン、アナウンサーといった異分野からの出演者も多く、警備員役として大槻ケンヂ（筋肉少女帯ボーカル）が、アイスクリームの男役として斉藤晴彦が、講演者として小林克也がそれぞれ特別出演しています。巨大な鬼のスーツアクターを務めたのは、長年日本の特撮を支えてきた新堀和男です。

スタッフ

監督は石井てるよしが担当しました。脚本は、先述の製作経緯にも関わる小中千昭が手掛けています。撮影は古川誠、音楽は「うさうさ」というユニット名で、奈良橋敬也と脚本の小中千昭が共同で担当しました。本作の象徴ともいえる鬼の製作は若狭新一が手掛け、ビジュアル面で多大な貢献をしています。また、映画の顔となるポスターイラストは、漫画家・永井豪が担当し、その独特なタッチで作品世界を表現しました。製作はニュー・センチュリー・プロデューサーズが担当しました。

ノベライズ

映画の公開に合わせ、ノベライズ版も刊行されています。石井てるよし監督と森幸也による共著『TARO! 東京大魔界』として、映画公開に先立つ1991年4月30日に、朝日ソノラマのソノラマ文庫から発売されました。この書籍版では、映画のポスターイラストも担当した永井豪が挿絵を描き下ろしており、表紙カバーには劇場公開時の永井による鬼のポスターイラストに主人公などが加筆されたものが使用されています。映画本編とは異なる表現で物語を楽しむことができ、作品の世界観を補完する資料としても価値があります。

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