THAI FIGHT

THAI FIGHT（タイファイト）とは

タイ王国が誇る国技、ムエタイを基盤とする注目の格闘技イベントが「THAI FIGHT（タイファイト）」です。この団体は2009年に、元テレビディレクターであるNopporn Wartin氏の手によって設立されました。THAI FIGHTの設立目的は、伝統的なムエタイの形式を守りつつも、現代の多様なニーズに応えるエンターテインメントとして、より広い層にその魅力を伝えることにあります。その活動は政府も後押ししており、2010年8月にはタイ国政府観光庁と共同で、記念すべき第1回大会が開催されました。

設立の背景

THAI FIGHTが誕生した背景には、21世紀に入ってからのタイ社会の大きな変化があります。経済が著しく発展するにつれて、かつては主に賭博の対象であったり、貧困層のスポーツと見なされていたムエタイから、一般市民の関心が離れていく傾向が見られるようになりました。このままではタイの重要な文化遺産であり国技であるムエタイが衰退してしまうのではないか、という懸念が高まります。こうした状況を打開し、ムエタイを再び国民的、そして国際的な人気スポーツとして輝かせようという強い意志のもと、タイ政府の協力体制のもとでTHAI FIGHTが立ち上げられました。伝統への敬意を払いながらも、試合の形式や演出を現代的にアレンジし、純粋なエンターテインメントとして誰もが楽しめるようなイベント創出を目指したのです。

大会の特徴と歴史

THAI FIGHTの大会は、その華やかな演出と高いエンターテインメント性が大きな魅力です。国内の主要テレビ局であるチャンネル3で試合が生中継されることにより、多くのタイ国民やムエタイファンがリアルタイムで熱戦を観戦できます。大会の幕開けを飾る開会式では、ムエタイの長い歴史と精神性を表現する古式ムエタイの舞や、タイの豊かな音楽文化を感じさせる演奏が披露され、単なる格闘技イベントに留まらない文化的な要素も重視されています。

競技面では、トーナメント形式の大会が頻繁に開催され、優勝者には豪華な賞金や副賞が授与されることも特徴です。インプット情報によると、優勝者には多額の賞金（200万バーツ、日本円で約550万円相当）に加え、主要スポンサーであるISUZU社製のピックアップトラック1台が贈られるなど、選手のキャリアアップやモチベーション維持に大きく貢献しています。また、2011年には当時の国王ラーマ9世陛下の支援を受けて「タイ・ファイト・キング・カップ・トーナメント」が開催されるなど、国家的な権威からも認められている団体であることがうかがえます。

独自ルールとスタイル

THAI FIGHTが一般的なムエタイ大会と差別化を図っている重要な点の一つに、独自の試合ルールがあります。伝統的なムエタイが3分5ラウンド制を採用しているのに対し、THAI FIGHTの試合は3分3ラウンド制で行われます。この短縮されたラウンド数は、選手に試合開始から積極的に攻めることを促し、特にパンチの応酬が多くなるなど、よりアグレッシブでスピーディーな試合展開を生み出しています。これにより、初心者や普段ムエタイを見慣れていない観客でも、エキサイティングな攻防を短時間で楽しむことができます。

また、試合における選手の装いにも独自の規定があります。出場選手は皆、黒または白の同じデザインのトランクスと、黒または白のグローブを着用してリングに上がります。これは、見た目の統一感を出すとともに、選手個人の個性よりもTHAI FIGHTというイベント自体のカラーを強調する意図があるのかもしれません。

THAI FIGHTのプロモーターを務めるAkapon Ammany氏は、日本のメディアのインタビューに対して、THAI FIGHTのリングでは「THAI FIGHTらしい」アグレッシブなスタイルでの試合を強く求めていると発言しています。通常のムエタイに見られるような消極的な駆け引きや待ちの姿勢ではなく、積極的に相手に向かっていくファイトスタイルを推奨しており、もしそのような試合をする選手がいれば、試合後に直接指導を行うこともあると述べています。このことからも、THAI FIGHTが伝統を踏まえつつも、現代におけるムエタイの新しい形、エンターテインメントとしての魅力を追求している姿勢が読み取れます。

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