THE BEST (松山千春のアルバム)

松山千春『THE BEST』

1985年9月21日、シンガーソングライター松山千春の企画ベスト・アルバム『THE BEST』が、キャニオン・レコードより発売されました。この作品は、彼のデビューから1980年代前半にかけて発表された楽曲の中から、特に人気の高い代表曲を選りすぐって収録した一枚です。ファンにとっては、初期の軌跡を辿る上で欠かせないセレクションとなっています。

アルバムには、初期の主要なシングル曲や、高い評価を得た初期のオリジナルアルバムに収録されていた楽曲がバランス良く収められています。収録されているのは、全14曲です。

まず、彼の名を広く知らしめた大ヒット曲「季節の中で」は、5枚目のシングルとして発表された楽曲です。そして、松山千春のキャリアの出発点である「旅立ち」は、記念すべき1枚目のシングルであり、同時に1枚目のオリジナルアルバム『君のために作った歌』にも収められた重要な楽曲です。

デビュー初期の作品からの選曲が多いのが特徴で、特に1stアルバム『君のために作った歌』からは、「旅立ち」の他、「君のために作った歌」というアルバムタイトル曲、そして「大空と大地の中で」、「かざぐるま」、「銀の雨」といった多数の楽曲が選ばれています。「かざぐるま」と「銀の雨」は、それぞれ2枚目のシングルA面とB面曲でもあり、『君のために作った歌』にも収録されました。

2枚目のアルバム『こんな夜は』からは、「私を見つめて」が選曲されています。また、3枚目のアルバム『歩き続ける時』からは、美しい情景を描いた「雪化粧」が、そして4枚目のアルバム『空を飛ぶ鳥のように 野を駈ける風のように』からは、アルバムタイトルを冠した「空を飛ぶ鳥のように 野を駈ける風のように」が収録されています。

シングル曲としては、「旅立ち」「季節の中で」の他に、4枚目のシングル「青春」、6枚目のシングル「窓」、7枚目のシングル「夜明け」、そして多くの人々に愛唱される名バラード「恋」として知られる8枚目のシングルが収録されています。さらに、3枚目のシングルとして発表された「時のいたずら」も選ばれています。

このように、『THE BEST』は、松山千春がキャリアの比較的早い時期に生み出した数々の名曲を一同に集めた作品です。デビューから約10年間の活動の中で生まれた楽曲の中から、時代を超えて歌い継がれる代表曲が網羅されており、当時のファンはもちろんのこと、後に彼の音楽に触れたリスナーにとっても、その初期の世界観を知るための入門編としても機能するアルバムと言えるでしょう。発売された1985年は、彼が円熟期を迎えつつある時期であり、それまでの足跡を振り返る企画盤として、まさに「ザ・ベスト」の名にふさわしい内容となっています。収録曲それぞれの出典を辿ることで、彼の創作活動の変遷や、初期作品がいかに豊かであったかを知ることができます。このアルバムは、松山千春の音楽史における重要な節目の一つとして位置づけられる作品です。

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