THE END OF THE CENTURY

聖飢魔II『THE END OF THE CENTURY』：悪魔的進化とバンドの転換点

1986年4月2日、日本のヘヴィメタル・シーンに衝撃が走った。聖飢魔IIの2ndアルバム『THE END OF THE CENTURY』がリリースされたのだ。前作『聖飢魔II〜悪魔が来たりてヘヴィメタる』から約7ヶ月という短期間でのリリースは、彼らの勢いを如実に示している。本作は、聖飢魔IIにとって初のセルフ・プロデュース作品という点でも注目に値する。

前作を凌駕する成功とバンド内部の葛藤

前作はオリコン最高30位、売上3.8万枚という結果に終わったものの、日本のヘヴィメタル史に新たな一章を刻んだ。地道なライブ活動と音楽誌への露出、そしてバラエティ番組への出演などを通して、聖飢魔IIは着実に知名度を上げていた。しかし、本作『THE END OF THE CENTURY』は、その成功をはるかに凌駕する大ヒットを記録する。シングルカットされた「蝋人形の館」はチャートを駆け上がり、テレビ出演も増加。オリコンチャートでは最高5位、売上は14万枚を突破し、聖飢魔IIのオリジナル・アルバムとしては最高記録を樹立した。

しかし、この成功の裏には、バンド内部の葛藤が潜んでいた。爆発的な人気は、想像をはるかに超える取材依頼の嵐を呼び込み、音楽関係の事務所には対応しきれないほどの負担がかかった。メンバーにも、この状況に対する不満が募り始める。特に、ベース担当のゾッド星島は、自身の演奏力不足を痛感し、バンドからの脱退を表明する。これは、人気急上昇という大きな転換期に、バンドが直面した大きな試練でもあった。

音楽性：初期代表曲と新境地

『THE END OF THE CENTURY』は、メンバー浜田による楽曲の集大成とも言うべき作品である。初期の代表曲が多数収録されており、聖飢魔IIの音楽的アイデンティティを確立した重要な作品と言えるだろう。さらに、前作から加入した大橋による楽曲も初収録され、バンドの音楽的幅を広げる役割を果たしている。大橋の楽曲は、当時流行していたLAメタルの影響を感じさせる疾走感あふれるものが多い。また、セルフプロデュースによってレコーディング技術も向上し、より洗練されたサウンドを実現している。

楽曲制作においては、メンバー間の意見交換や、レコーディング・エンジニアとの連携が深く関わっていた。ドラムス担当の湯沢は、大橋からの多くの指摘に苦労しながらも、最終的には質の高い演奏を完成させた。後から加入したメンバーも、本作を研究することで聖飢魔IIの音楽性を理解し、バンドに溶け込もうと努力したというエピソードも残っている。

各楽曲の背景と制作過程

アルバム収録曲一つ一つにも、興味深いエピソードが隠されている。「THE END OF THE CENTURY」は「世紀末」をテーマに制作されたが、浜田の自由な作曲スタイルの中で、コンセプトに沿った制作は容易ではなかったという。「悪魔の讃美歌」は、浜田がアマチュア時代に制作した最後の曲であり、その後の彼の音楽活動にも影響を与えたとされる。「JACK THE RIPPER」は、聖飢魔IIの前身バンドからの楽曲をアレンジしたものだ。これらの楽曲は、聖飢魔IIの音楽的ルーツと、バンドの進化を物語る重要なピースとなっている。

リリースとプロモーション

アルバムはLP、カセットテープ、CDの3形態でリリースされた。当時、聖飢魔IIが所属していたレーベルは、中高生にも購入しやすい価格設定を心がけていたため、本作のLPはミニアルバム形式でリリースされた。また、テレビ出演も増加し、「夕やけニャンニャン」ではレギュラーコーナーを持つまでになった。しかし、過剰な人気は、バンドメンバーに大きな負担をもたらし、様々な問題へと発展していくことになる。

批評家の評価

音楽評論家からは、本作のサウンドに対して高い評価が与えられている。キッス風のコスチュームやブラック・サバス風なコンセプトとサウンドを挙げつつも、ヘヴィメタル特有の重厚でドラマチックなサウンドを賞賛する声が多かった。セルフ・プロデュースによる完成度や、初期代表曲と大橋の才能開花を評価する声もあった。

まとめ

『THE END OF THE CENTURY』は、聖飢魔IIの音楽的進化と、バンドを取り巻く状況の変化を象徴する作品である。商業的成功と、それに伴うバンド内部の葛藤、そして各楽曲に込められた情熱と歴史。これらの要素が複雑に絡み合い、このアルバムを、聖飢魔IIの歴史における重要な転換点に位置付けている。

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