THE MOMENT

『THE MOMENT』：角松敏生のプログレッシブ・ポップへの挑戦

2014年3月19日、角松敏生は自身の21作目となるスタジオ・アルバム『THE MOMENT』をリリースしました。前作『REBIRTH 1 〜re-make best〜』がセルフカバー・ベストアルバムだったことから、本作への期待は高まっていました。しかし、角松自身は、セルフカバー作品を連発するつもりはなく、次の作品では自身の好きな音楽を追求したいと考えていました。そして、その結果生まれたのが、この『THE MOMENT』なのです。

本作は、角松が長年愛してきたイエスなどのプログレッシブ・ロックを強く意識した、いわゆる「プログレッシブ・ポップ」と銘打たれた作品となっています。全5曲という少ない収録数ながら、各曲は20分前後の大作で構成されており、アルバム全体の演奏時間は一般的なオリジナルアルバムとほぼ変わりません。まるで組曲のような構成が、リスナーを角松流の音楽世界へと誘います。

アルバムの構成は以下の通りです。

1. OPENING ACT feat. SHIENA：アルバムの幕開けを飾るイントロダクション的な楽曲。
2. The Moment of 4.6 Billion Years 〜46億年の刹那〜：本作のメインとなる大曲。壮大なスケール感と繊細なメロディーが印象的です。「珊瑚礁の誕生」「愛の深淵」「船出」「絆」「永遠の記憶」「島嶼の夜明け」という6つのパートから構成されており、まるで一つの物語を聴いているかのような感覚に陥ります。鬼無宣寿氏によるクワイアアレンジも聴きどころです。
3. Get Back to the Love：こちらも大曲で構成されています。「Get Back to the Love」「You are Still with Me」「Hero」「Show Me the Way」「Get Back to the Love(Reprise)」の5パートからなり、各パートで異なる表情を見せてくれます。本田雅人氏のブラスアレンジと鬼無宣寿氏のクワイアアレンジが見事に調和した、聴き応えのある楽曲です。
4. THE LIFE 〜いのち〜：比較的短い楽曲ですが、角松敏生のソングライティング能力が光る、聴き心地の良い一曲です。
5. I SEE THE LIGHT 〜輝く未来〜：ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の主題歌のカバーです。原曲の持つ明るさと感動をそのままに、角松敏生ならではの解釈が加えられた、見事なアレンジとなっています。小林信吾氏によるオーケストラアレンジもアルバムの豪華さをさらに際立たせています。

『THE MOMENT』は、単なる楽曲の集まりではなく、一つの壮大な物語を表現した作品と言えるでしょう。角松敏生が長年培ってきた音楽性と、新たな挑戦が融合した、彼の音楽キャリアの中でも重要な作品の一つです。Blu-spec CD2仕様でリリースされ、ブックレットには角松自身によるセルフライナーノーツが掲載されています。初回限定盤にはライブのバックステージ招待応募券も封入されていました。このアルバムを通じて、角松敏生の音楽世界の深淵に触れることができるでしょう。

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