TKS (宇宙船)

TKS（補給輸送船）について

TKS（ロシア語: ТКС、Транспортный корабль снабжения、直訳で「補給輸送船」）は、1970年代から1980年代にかけてソビエト連邦が開発・運用した宇宙船で、宇宙ステーションへの人員および物資の補給を目的としていました。ソユーズ宇宙船の約2.5倍の重量を誇り、打ち上にはプロトンロケットが使用されました。

開発の背景

1965年、ソ連はアルマースという名の軍事宇宙ステーションの開発に着手しました。この宇宙ステーションに必要な物資や人員を輸送するための手段として、TKSが設計されました。試験飛行が1976年に開始され、1981年には無人補給ミッションの準備が整いました。しかし、アルマース計画は1978年に中止され、TKSはその目的を失ってしまいました。

その後、TKSは非軍事目的のサリュート6号および7号への補給に使用されることとなりましたが、実際には3回の飛行のみで1985年に退役しました。TKSは最大で乗員3名を搭乗させることができる設計でしたが、有人飛行は一度も行われませんでした。TKS自体は宇宙船としては成功を収められませんでしたが、その設計は後の宇宙ステーションのモジュールであるクバントやザーリャに流用されました。

設計詳細

TKSの設計は、ソユーズ宇宙船やアポロ宇宙船と共通点が多く、機体の一部のみがカプセルとして地球に帰還する形式をとっていました。TKSの帰還カプセルはVA（または11F74）と名付けられ、アポロの司令船に似た円錐形をしていましたが、より小型で再利用が可能でした。カプセルの上には帰還用の減速ロケットが搭載され、さらに上には緊急脱出システムが組み込まれています。

カプセルの下に連結されていたのは、FGB（または11F72）と呼ばれる円筒形の与圧モジュールであり、乗員はVAカプセルの底面にあるハッチから自由に出入りでき、45m³の広い内部空間を利用することが可能でした。比較として、ソユーズ宇宙船は約9m³の容積しかありません。

FGBモジュールの後部には、アルマース宇宙ステーションとのドッキングに必要な覗き窓や制御装置、アンテナ、ドッキングポートが配置されていました。また、ステーションでの偵察活動で取得されたフィルムを地上に送るための8個の小型再突入カプセルも装備されていました。

フライト履歴

TKSに関する宇宙飛行は合計7回あり、そのうち打ち上げに失敗した1回を除きました。全てのミッションは「コスモス衛星」として報告されました。4回はVAカプセルのみを使用した大気圏再突入の実験でしたが、TKS全体が飛行したのは4回に留まりました。

• - 1976年12月5日 - コスモス881号・882号: VAカプセルのみの同時打ち上げ
• - 1977年7月17日 - コスモス929号（TKS-1）: TKS全体の初の試験飛行
• - 1977年8月5日 - カプセルの打ち上げ失敗
• - 1978年3月30日 - コスモス997号・998号: VAカプセルのみの同時打ち上げ
• - 1979年5月23日 - コスモス1100号・1101号: VAカプセルのみの同時打ち上げ
• - 1981年4月25日 - コスモス1267号（TKS-2）: サリュート6号とのドッキング
• - 1983年3月2日 - コスモス1443号（TKS-3）: サリュート7号とのドッキング
• - 1985年9月27日 - コスモス1686号（TKS-4）: サリュート7号とのドッキング、最終ミッション

TKSと対になるはずだったアルマース宇宙ステーションは、試験期間中に多くの計画変更が行われ、1978年には有人計画が中止されました。このため、TKSの開発を続ける意義は失われ、短命で終わりました。

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