TOG 1重戦車

TOG1重戦車：塹壕戦を想定した巨兵

第二次世界大戦の初期、イギリス軍は前大戦の経験を踏まえ、新たな重戦車の開発に着手しました。その産物の一つが、TOG1重戦車です。第一次世界大戦のような塹壕戦を想定し、砲撃で荒廃した地や塹壕も容易に通過できる高い走行能力を重視した設計が特徴です。

誕生の背景：特殊車両開発委員会

TOG1の開発は、1939年7月に設立された特殊車両開発委員会によるものです。委員長を務めたアルバート・スターン卿をはじめ、第一次世界大戦で戦車開発に携わったそうそうたるメンバーが集結していました。その顔ぶれには、海軍建造部長官や戦車供給部長などを歴任した人物も含まれており、彼らの経験と知見がTOG1の開発に大きく貢献しました。この委員会は、メンバーの多くが以前から親交のあった人物であったことから「The Old Gang（昔馴染み）」と呼ばれ、その頭文字をとって開発車両には「TOG」の名称が与えられました。

圧倒的な車体と独特の設計

特殊車両開発委員会は、高い超壕能力と歩兵輸送能力を兼ね備えた重戦車の設計案を策定しました。その設計案に基づき、フォスターズ・オブ・リンカーン社によって製造されたTOG1は、大型の車体と巨大な履帯が目を引く存在でした。車体側面には乗降用のドアが設けられ、小型の砲塔が搭載されていました。

試作車両の運命

1940年10月に完成したTOG1は、当初機械発電駆動方式を採用していましたが、問題発生のため油圧駆動方式に換装されました。この換装作業は1943年4月まで続けられ、換装後の車両はTOG1Aと呼ばれました。しかし、TOG1は試作車両の段階にとどまり、量産化されることはありませんでした。その理由は、同時期に開発が進められていたチャーチル歩兵戦車の成功に軍部の関心が移ったことなどが考えられます。チャーチル戦車は、TOG1とは異なり、機動性を重視した設計が採用されており、戦場で高い効果を発揮しました。TOG1はチョバムへと送られた後、歴史の表舞台から姿を消します。

TOG2への発展と未来への影

TOG1の後継として、TOG2の開発も計画されましたが、こちらも試作段階で終わっています。TOG1、TOG2ともに、量産化には至らなかったものの、それらの設計思想や技術は、後のイギリス戦車開発に少なからず影響を与えたと考えられます。 特に、塹壕戦への対応という点では、後の戦車開発においても重要な要素として考慮されていくことになります。TOG1は、試作車両のみに終わったものの、第一次世界大戦の経験を踏まえた独自の設計思想と、当時の戦車開発技術の到達点を知る上で貴重な存在と言えるでしょう。

参考文献

* Paxman history pages (外部リンク)

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