TOUCH AND GO

角松敏生『TOUCH AND GO』：海外レコーディングとプラトニックな表現の融合

1986年6月11日、角松敏生による6枚目のスタジオ・アルバム『TOUCH AND GO』がリリースされました。本作は、前作『GOLD DIGGER』でドラムのオーバーダビングのみ行ったニューヨークでのレコーディング経験を活かし、ベーシック・トラックからニューヨークでレコーディングを行い、さらに東京とロサンゼルスでもダビング作業を行うなど、角松敏生にとって本格的な海外レコーディングが導入された記念碑的な作品となりました。

音楽的な試みだけでなく、歌詞においても大きな変化が見られます。『GOLD DIGGER』でみられた直接的な表現から一転、本作ではプラトニックな表現へとシフトチェンジ。この変化は、角松敏生自身の心情の変化や表現方法の探求を反映していると言えるでしょう。より繊細で内省的な歌詞世界は、リスナーに新たな感動を与えたに違いありません。

アルバム収録楽曲の中でも特に注目すべきは、「TAKE OFF MELODY」「LUCKY LADY FEEL SO GOOD」「PILE DRIVER」の3曲です。これらの曲は、12インチ・シングルとしてリミックスバージョンがリリースされ、クラブシーンでも高い人気を博しました。また、「THE BEST OF LOVE」はシングルとして先行リリースされた後、アルバム収録にあたり再レコーディングされています。このこだわりは、角松敏生の音楽に対する真摯な姿勢を象徴すると言えるでしょう。

さらに、『TOUCH AND GO』に収録された楽曲の中には、後に他のアルバムにリテイクバージョンが収録されたものもあります。「AUGUST RAIN」は、バラード・ベスト・アルバム『TEARS BALLAD』に、「TAKE IT AWAY」はセルフカバー・アルバム『EARPLAY 〜REBIRTH 2〜』に収録され、それぞれ新たなアレンジで聴くことができます。これらのリテイクは、楽曲の持つ普遍的な魅力を改めて証明するものと言えるでしょう。

『TOUCH AND GO』の高い評価は、第28回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞したという事実からも明らかです。これは、角松敏生の音楽的才能と、本作の高い完成度を認められた証と言えるでしょう。

SIDE 1

OVERTURE
LUCKY LADY FEEL SO GOOD (作詞・作曲・編曲：角松敏生)
TAKE IT AWAY (作詞・作曲・編曲：角松敏生、ブラス編曲：Jerry Hey)
AUGUST RAIN 〜It's Our Pure Hearts〜 (作詞・作曲・編曲：角松敏生、ブラス編曲：Jerry Hey)

SIDE 2

PILE DRIVER (作詞・作曲・編曲：角松敏生)
1975 (作詞・作曲・編曲：角松敏生、ブラス編曲：Jerry Hey)
GOOD-BYE LOVE (作詞・作曲・編曲：角松敏生)
THE BEST OF LOVE (作詞・作曲・編曲：角松敏生、ブラス編曲：Jerry Hey)

スタッフ

プロデューサーからスタイリスト、ヘアメイクまで、多くのスタッフが携わって制作された本作。角松敏生本人のみならず、多くの才能が結集した結果、この名盤が誕生したと言えるでしょう。クレジットには、関わった全ての人々への感謝が記されています。

このアルバムは、音楽史に刻まれる角松敏生の代表作の一つであり、彼の音楽性を多角的に理解するための重要な作品です。日本の音楽シーンに大きな影響を与えた本作を、改めてじっくりと聴いてみることをお勧めします。

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