EARPLAY 〜REBIRTH 2〜

『EARPLAY 〜REBIRTH 2〜』：角松敏生によるAOR的セルフカバー・アルバム

2020年5月13日にリリースされた『EARPLAY 〜REBIRTH 2〜』は、角松敏生による2作目のリメイク・ベストアルバムです。前作『REBIRTH 1 〜re-make best〜』に続くREBIRTHシリーズの第2弾として、角松敏生自身の楽曲と洋楽カバーを、新たなアレンジで収録しています。

小林信吾氏とのコラボレーションとAORへの回帰

本作では、日本を代表するピアニスト、アレンジャー、プロデューサーである小林信吾氏がアソシエイト・プロデューサーとして参加。小林氏は長年に渡り角松敏生のライブやレコーディングに携わってきた人物であり、その存在は本作の音楽性において大きな役割を果たしています。

アルバム全体としては、AOR（アダルト・オリエンテッド・ロック）的なサウンドを前面に押し出しつつ、過去楽曲のライブアレンジを基にしたセルフカバーが中心となっています。角松敏生は、それ以前の作品についてはバッキングトラックを再録音する必要はなく、ボーカルパートのみを再録音してリミックスするという手法を検討していました。しかし、『AFTER 5 CLASH』以降の作品は、前事務所が所有するアナログマルチテープの権利問題や経年劣化の問題があったため、デジタルアーカイブ化に関する交渉が続けられました。その中で、現在の技術を用いてトラックそのものをリアレンジする作業にも面白みを感じ、本作では「過去作品のライブ・リメイク・バージョンのスタジオ録音盤」というアプローチを採用しました。

エアプレイへのオマージュと世代へのメッセージ

アルバムタイトルとジャケット写真は、エアプレイのアルバム『AIRPLAY』（邦題：ロマンティック）のパロディとなっています。角松敏生と小林信吾は、2013年頃からAORのパロディアルバムを制作しようと構想を練っており、本作はその構想を実現する形となりました。ジャケット写真では、角松敏生がジェイ・グレイドン、小林信吾がデイヴィッド・フォスターに扮しており、衣装や構図はオリジナルを忠実に再現しつつ、背景のプロペラ機をジェット機にするなど、現代的なアレンジが加えられています。小林信吾によると、さらに再現性の高いバージョンも存在しましたが、オリジナルに酷似しすぎているためクレームの可能性を考慮し、現在のバージョンになったとのことです。

このエアプレイへのオマージュは、還暦を間近に控えた角松敏生と小林信吾世代のミュージシャンが、「次世代に何を遺すか」という問いを投げかける、自己への問いかけと風刺を込めた表現とも解釈できます。

楽曲解説と発売延期

本作にはセルフ・ライナーノーツが収録されていますが、角松敏生の多忙により全曲解説は掲載されず、Facebook公式アカウントで不定期連載されました。当初は2020年4月22日発売、春のライブツアーも予定されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言発令の影響により、アルバム発売は延期され、ツアーは中止となりました。そのため、発売日変更後の出荷を優先したため、ジャケットの差し替えは行われず、商品内表記に一部発売時期にそぐわない記述が残されたまま発売されました。

小林信吾氏の逝去と本作の意義

2020年10月4日、アソシエイトプロデューサーを務めた小林信吾氏が逝去されました。本作は、小林信吾氏の遺作の一つとなりました。

ボーナスCDと収録楽曲

初回生産限定盤には、ミュージカル『東京少年少女』の収録曲をミュージカル版のオリジナルキャストで歌い直したボーナスCDが付属しています。

『EARPLAY 〜REBIRTH 2〜』は、角松敏生と小林信吾の音楽的才能と、時代への鋭い視点を融合させた、非常に意義深い作品と言えるでしょう。

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