TRIGA

TRIGAは、アメリカのゼネラル・アトミックス社によって設計・製造された小型の研究用原子炉です。この名称は「Training（教育・訓練）、Research（研究）、Isotopes（アイソトープ）、General Atomics」の頭文字を取ったもので、その名の通り、教育、研究、そしてアイソトープの生産を主な目的としています。設計チームは、著名な物理学者フリーマン・ダイソンが率いていました。

TRIGAは、その特徴的な設計から、世界中で広く利用されています。原子炉は、スイミングプール型と呼ばれるオープンな水タンク内に設置されており、上部から炉心を直接観察することができます。この構造により、特別な原子炉建屋を必要とせず、比較的容易に設置できるため、大学や研究機関での利用に適しています。炉心は、直径と高さが共に35.6cmの円筒形で、水槽の底に沈められています。水槽の周囲は、厚いコンクリートで遮蔽され、放射線を外部に漏らさないようになっています。

燃料には、20%濃縮ウランと水素化ジルコニウムの合金（UZrH）が用いられており、負の反応度温度係数を持つように設計されています。この特性により、炉心温度が上昇すると核分裂が抑制され、温度が下がるため、物理的にメルトダウンが発生する可能性が非常に低いという安全性を誇ります。初期のTRIGA原子炉は高濃縮ウラン燃料を使用していましたが、1978年以降はアメリカエネルギー省の政策により、低濃縮ウラン燃料への転換が進められました。

TRIGAのプロトタイプであるTRIGA MarkIは、1958年にサンディエゴで初めて稼働し、1997年に閉鎖されるまで長年にわたり運用されました。この原子炉は、原子力開発史における重要なランドマークとしてアメリカ原子力学会から評価されています。その後、TRIGA MarkII、MarkIIIなど、様々なバリエーションが開発され、アメリカ国内では35基、海外でも35基が設置されました。

海外への設置は、1953年にドワイト・アイゼンハワー大統領が発表した「平和のための原子力」政策によって促進されました。この政策により、TRIGA原子炉はオーストリア、ブラジル、コンゴ民主共和国、メキシコ、イラン、イタリア、日本、スロベニア、ベトナムなど、様々な国に導入されました。

日本では、立教大学原子力研究所が横須賀市にTRIGA MarkIIを研究炉RURとして導入し、武蔵工業大学（現東京都市大学）も川崎市にTRIGA MarkIIを研究炉MITRRとして導入しました。しかし、両研究炉とも周辺の宅地化が進んだため、RURは2001年に、MITRRは2004年に運転を停止し、廃止措置が進められています。

TRIGAの燃料集合体は、ゼネラル・アトミックス社とフランスのフラマトム社の子会社であるCERCA社の合弁事業である「TRIGA International」によって製造されています。この合弁会社は1996年に設立され、以来、燃料はフランスのCERCA社の工場で生産されています。

ゼネラル・アトミックス社は、さらにモロッコ、ルーマニア、タイなどにも新たなTRIGA原子炉を設置しており、研究炉の供給市場において、フランスのフラマトム社やドイツのシーメンス社と競合しています。

TRIGAは、その安全性、柔軟性、そして設置の容易さから、世界中で研究開発、教育、医療分野など、多岐にわたる用途で利用され続けています。

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