Tacet

タセットとは

タセット（Tacet）は、ラテン語で「声や音を出さない」という意味を持つ音楽用語です。この表現は特に、多声合唱やオーケストラのスコアにおいて見られ、演奏者に長い休止を指示する際に使用されます。通常、この指示は楽章全体にわたるもので、楽器や声が演奏されることはありません。テクニックとして、クラシック音楽から現代のジャズに至るまで、タセットの定義は幅広い音楽文脈に適用されています。

タセットの使われ方

クラシック音楽の初期交響曲において、タセットはしばしば金管楽器や打楽器を特定の楽章から除外し、その楽章が全ての演奏者において休むことを指示する手段として利用されていました。特に、ゆったりしたテンポで進行する第2楽章においては、その効果が顕著です。また、伴奏音楽の文脈でも、特定の部分で演奏を止めるような指示として使われることが一般的です。

このようにタセットは、演奏のダイナミクスや表現において重要な役割を果たし、演奏者に対する特別な指示を与えることで、全体の音楽の流れをコントロールする手段となっています。

現代音楽におけるタセット

現代音楽、特にジャズでは、タセットはしばしば短いブレークを指示するために採用されています。ジャズ演奏では、セッション中に一時的に全員が演奏を止めることがリズムやテンションを高める要因となることがあります。このように、タセットは音楽の多様性に寄与し、新たな表現方法を生み出す重要な要素として機能しています。

ジョン・ケージの「4分33秒」

特に注目すべきは、1952年にジョン・ケージが発表した作品「4分33秒」です。この独特な作品では、すべての楽章においてすべての楽器にタセットの指示が与えられており、一音も演奏されないまま4分33秒が特定の時間枠として設定されています。ケージはこの作品を通じて、音楽とは何か、聴解の意味や聴衆の役割について問いかけ、タセットを意識的に使用しています。

このように、タセットはただ単に音を出さないことを指示するだけではなく、音楽の構造やダイナミクスにおいて深く関与していることがわかります。音楽家はこの概念を通じて、演奏に新たな意味を付加し、リスナーに印象的な体験を提供する手段として活用することが可能なのです。

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