Tattoo -刺青

台湾映画『Tattoo -刺青-』：刺青が紡ぐ、愛と友情、そして心の傷

周美玲監督による台湾映画『Tattoo -刺青-』（原題：刺青、英題：Spider Lilies）は、刺青を介して描かれる女性たちの恋愛感情や友情、そして心の傷を繊細に表現した作品です。2007年の台湾公開時には、口コミとメディアの宣伝効果によって、公開初週で440万台湾ドルという高い興行収入を記録し、最終的には約1420万台湾ドルに達する大ヒットとなりました。香港でも315万香港ドル（レート換算で1300万台湾ドルを超える）の興行収入を上げ、台湾と香港で1300万台湾ドルを超えるヒット作となった数少ない台湾映画の一つとなりました。

映画は、昼間は学生、夜はネットアイドルとして活動する小緑と、刺青師として働く竹子という対照的な二人の女性を中心に物語が展開します。一見軽率に見える小緑ですが、内面には複雑な感情を抱えています。一方、竹子は中学生時代に経験した地震がきっかけで、心を閉ざした過去を持っています。彼女たちの関係は、互いの心の傷を癒やし、支え合う複雑なものであり、刺青という行為を通して、より深く探求されていきます。

竹子の周りには、初恋の相手である真真、竹子の店で刺青を入れる不良の阿東、地震のショックで家族の記憶を失ってしまった竹子の弟である阿青、そして小緑のサイトを捜査する警察のネット担当捜査官である大宇など、個性豊かな登場人物たちが登場します。それぞれの登場人物が抱える問題や葛藤、そして互いに影響を与え合う様子が、丁寧に描かれています。

『Tattoo -刺青-』は、単なる恋愛映画ではありません。地震というトラウマ体験や、社会的な偏見、アイデンティティの葛藤など、様々なテーマが複雑に絡み合い、観る者に深い印象を与えます。刺青という行為は、登場人物たちの心の傷や葛藤を象徴するだけでなく、自己表現や、他者との繋がりを求める意思の表れとしても捉えることができます。

日本では、2007年の第16回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭での上映を皮切りに、『TATTOO -刺青-』の邦題で公開されました。その後、「台湾シネマコレクション2008」の一環として東京と大阪で上映され、2010年にはDVDも発売されました。また、香川レインボー映画祭でも上映されるなど、日本でも一定の評価を得ています。

さらに、『Tattoo -刺青-』は、2007年の第57回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品され、テディベア賞を受賞しています。この受賞は、本作の芸術性と社会的な意義を国際的に認められた証と言えるでしょう。

キャストには、楊丞琳（レイニー・ヤン）、梁洛施（イザベラ・リョン）、陳意涵（アイビー・チェン）など、台湾を代表する実力派俳優たちが名を連ねています。彼らの繊細な演技によって、登場人物たちの複雑な感情がより鮮やかに表現され、観る者の心を揺さぶります。

『Tattoo -刺青-』は、刺青という独特なモチーフを通して、愛と友情、そして心の傷を深く掘り下げた、感動的な人間ドラマです。レズビアン女性の恋愛を描いているものの、そのテーマは普遍的なものであり、性別や性的指向に関わらず、多くの人々の共感を呼ぶ作品と言えるでしょう。

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