Team Foundation Server

Team Foundation Server (TFS) とは

Team Foundation Server（TFS）は、マイクロソフトが開発した統合開発環境向けのサーバー製品です。製品のバージョン管理、レポーティング、要件管理、プロジェクト管理、ビルド自動化、テスト自動化、リリース管理といった、ソフトウェア開発に必要な多くの機能を統合的に提供します。Visual Studioファミリーの一製品として、大規模なチームでの開発を効率的に進めるための基盤となります。

TFSの概要

TFSは、Visual Studio 2005の登場に合わせて、大規模チームでの開発を支援するサーバー製品として2006年にリリースされました。その後、Visual Studioのバージョンアップに伴い、1～2年ごとに新しいバージョンがリリースされ、Team Foundation Server 2018まで進化しました。利用にはサーバーライセンスとクライアントアクセスライセンス（CAL）が必要ですが、Visual StudioのエディションによってはTFS CALが付属しています。TFSは、それ以前のVisual SourceSafe (VSS) の後継として、ソースコード管理だけでなく、要件管理、プロジェクト管理、ビルド自動化、テスト自動化、リリース管理など、大規模なチームでのソフトウェア開発を円滑に進めるための様々な機能を提供します。2019年以降、ブランド名はAzure DevOps Serverに変更されました。

TFSの歴史

Team Foundation Server 2005

2006年3月に製造工程にリリースされ、Visual Studio 2005 Team System (VSTS) と連携するサーバー機能として、2006年6月に一般提供が開始されました。Visual Studio 2005本体の発表より少し遅れてのリリースとなりました。Visual Studio 2005には、中小規模チームや個人向けのソースコード管理ツールとしてVisual SourceSafe 2005も含まれていましたが、大規模チーム向けの開発支援機能はTFS 2005が初めての提供となりました。TFS 2005はデュアルサーバー構成で最大約2,000ユーザーをサポートしました。

TFS 2005の主な機能としては、分散チームでの開発を支援するソースコード管理、開発プロセスを統合し、要件とバグを追跡・管理する作業項目の追跡、継続的なリリースを支援するチームビルド、チーム内の情報共有を支援するチームコミュニケーション、開発プロジェクトの状態をリアルタイムで表示するレポーティングなどが挙げられます。また、これらのチーム開発プロセス全体にプロセステンプレートを適用してプロジェクト管理を行うことができます。

TFSに含まれる中央管理型のバージョン管理システムは、Team Foundation Version control (TFVC) と呼ばれ、対となるVSTS 2005には、TFSを利用するためのクライアントソフトウェアであるチームエクスプローラが含まれていました。チームエクスプローラをインストールすることで、Visual Studio 2005の統合開発環境からTFSを利用できるようになりました。チームエクスプローラに対応していないソフトウェアは、Microsoft Source Code Control Integration Provider (MSSCCI Provider) に対応することで統合が可能です。サードパーティーからは、Eclipse統合開発環境やLinux/UNIX、MacintoshのクライアントからTFVCにアクセスするためのアドオンも提供されました。

TFS 2005の実行にはSQL Server 2005が必要であり、レポーティング等の機能は、SQL Server 2005の新機能に依存していました。TFS 2005には、SQL Server 2005 Standard Editionの正規版が同梱されており、小規模な利用であれば追加でSQL Serverを購入する必要はありませんでした。また、Windows SharePoint Services 2.0もモジュールとして利用されました。MSDNサブスクリプション会員向けには、利用ユーザー数を5名に限定した特別版、Visual Studio 2005 Team Foundation Server Workgroup Editionも配布されました。

Team Foundation Server 2008

2008年2月に他のVisual Studio 2008ファミリーと共に一般提供が開始されました。TFS 2008では、Windows Server 2008、SharePoint 2007、SharePoint Services 3.0のサポート、大規模グループの同期（デュアルサーバー構成、シングルインスタンスで約30,000ユーザー）、管理、運用およびセットアップの簡略化、ビルドにおけるUIからのサポートの強化、バージョン管理のオフライン作業の改善、作業項目の追跡における添付ファイルサポートなどが導入されました。

TFS 2005と同様、TFSで使用するためのSQL Server Standard Editionの正規版が同梱されていました。MSDNサブスクリプション会員向けには、利用ユーザー数を5名に限定した特別版、Visual Studio 2008 Team Foundation Server Workgroup Editionも配布されました。また、Visual Studio Team System Web Access (TSWA) 2008というTFSのWebクライアントも、TFS 2008 Power Toolという形でダウンロード可能になり、クライアントにソフトウェアをインストールしなくてもTFSの情報にアクセスできるようになりました。TFS Power Toolはその後も、2017年まで各バージョンでリリースされました。

Team Foundation Server 2010

2010年4月20日からMSDNサブスクリプション会員向けに、6月18日にはパッケージ版が一般提供開始されました。このバージョンから、連携するクライアント側のVisual Studio 2010製品がTeam SystemからVisual Studio Application Lifecycle Managementという名称に変更され、アプリケーションライフサイクルマネジメント (ALM) をより広範囲にサポートするようになりました。ALMにおいて重要なテスト分野では、テスト管理製品「Test Manager 2010」、仮想マシンによる動作環境管理「Visual Studio Lab Management 2010」、さらに管理製品「System Center Virtual Machine Manager (SCVMM) 」を併用することで、テスト環境を管理することが可能になりました。

TFS 2010では、Windows Workflow Foundation (WF) がビルドプロセスに追加され、以前はMSBuildのみが利用可能だったのが改善されました。また、TFS 2010では、Windows VistaやWindows 7などのクライアントOSにもインストールが可能になったり、インストールの手順が簡略化されました。クライアントOSにインストールした場合、同梱されているSQL Server 2008 Express Editionが自動的にインストールされます。Team Explorer Anywhereを使うことで、Eclipseをはじめとしたチームエクスプローラ標準対応でない環境とも統合が可能になりました。パッケージ版の価格も大幅に値下げされ、MSDNサブスクリプション会員向けの特別版Workgroup Editionは、このバージョンから通常版の配布となりました。

Team Foundation Server 2012

2012年9月に一般提供が開始されました。TFS 2012では、Microsoft PowerPointもAzure DevOpsと統合され、要件管理プロセスを支援するための迅速なストーリーボード開発が可能になりました。この統合により、PowerPointの組み込み関数でアニメーション化できる、あらゆるタイプのインターフェイスモックアップを構築するために使用できる拡張可能なストーリーボードシェイプが提供されました。これらのストーリーボードは、作業項目にリンクすることも可能です。

TFS 2012から、Web Access Extensionsと呼ばれるTeam Web Access用のカスタムアドインを作成できるようになりました。また、Update 1ではかんばんボードが導入されました。更新プログラムは、TFS 2010まではサービスパックと呼ばれていましたが、TFS 2012から"Update X"と呼ばれるようになりました。このバージョンから、学生やプログラミング初心者などをターゲットとした無償ダウンロード版のVisual Studio Expressファミリーに「Visual Studio Team Foundation Server Express」が登場しました。このエディションは、TFSの主要機能はそのまま利用でき、ユーザーは自分のシングルサーバーで開発環境をホストできます。ただし、5人以下でのみ利用可能（有償での追加は可能）、シングルサーバー限定、SQL Server Expressのみ対応、TFS Proxyのサポートなし、SharePoint統合利用不可といった制限事項があります。

Team Foundation Server 2013

2014年1月に一般提供が開始されました。このバージョンでは、バージョン管理システムとして、従来のTFVCに加えて、新たにGitもネイティブサポートするようになりました。これは標準的なlibgit2ライブラリに基づく実装であり、Gitをサポートする任意のプラットフォームやIDE上のツールがTFSに接続できるようになりました。例えば、XcodeとAndroid Studioの両方のメーカーGitプラグインをサポートします。さらに、開発者がEclipse用のTeam Explorer Everywhereプラグインを使いたくない場合は、eGitを使用してTFSに接続することもできます。

また、2013年半ばにInCycle Softwareより買収した製品InReleaseが、TFS 2013に「リリース管理」として組み込まれました。この機能は、自動化されたビルドおよびテストプロセスを補完することで、継続的デプロイメントを実現できます。TFS 2013では、「軽量レポート」と呼ばれる新機能が導入され、クエリ結果に基づいて、ウェアハウスやキューブに依存しないリアルタイムレポートを作成する機能を提供します。TFS 2012までは、Team Web Access内で直接、リアルタイムのバーンダウン、速度、およびCFDの図を提供していましたが、この旧機能はTFS 2013まで継続されました。また、Windows ストアアプリのビルドとテストが容易になり、テストの実行はMicrosoft Testの代わりにVisual Studio Test Runnerが使われるようになりました。無償ダウンロード版のVisual Studio Team Foundation Server Express 2013も提供されました。

Team Foundation Server 2015

2015年7月に一般提供が開始されました。Basicライセンスの拡張、データベーススキーマの変更、Project Server/SharePoint拡張機能のインストール方法の変更、プロダクトバックログのナビゲーション更新、かんばんボードの機能改善、プロセス テンプレートのSAFeサポート、クラウドベースのロードテスト、Node.jsアプリケーションに基づくビルドエンジンなどが実装されました。無償ダウンロード版のVisual Studio Team Foundation Server Express 2015も提供されました。

Team Foundation Server 2017

2016年11月に一般提供が開始されました。TFS 2017はVisual Studio 2017に先立ってリリースされ、2017年3月にVisual Studio 2017が一般提供開始された際には、TFS 2017 Update 1が同時公開されました。このバージョンでは、コード検索、パッケージ管理、アジャイルの機能強化（作業項目とかんばんボードの新機能）、作業項目のフォロー、かんばんボードのライブ更新、エピックおよび機能ボードのドリルダウン、ボードの注釈の有効化/無効化、かんばんボードでのフィルター処理、新しい作業項目のデフォルトのイテレーションパス、新しい拡張ポイント、電子メールの機能強化、Project Server統合の非対応化などが実装されました。このバージョンのExpress Editionはスキップされました。

Team Foundation Server 2018

2017年11月に一般提供が開始されました。このバージョンでは、Webのプロジェクト作成ウィザード、プロセステンプレートマネージャーの機能強化、作業項目フォームヘッダーのカスタマイズ、モバイル作業項目フォームの最適化、Gitフォークのサポート、GVFSでの大規模なGitリポジトリ管理、プルリクエストに対する多くの機能強化、Wikiのエクスペリエンスの強化、Mavenパッケージのサポート、テストのバッチ処理などが実装されました。無償ダウンロード版のTeam Foundation Server 2018 Expressも提供されました。

Visual Studio Team Services (VSTS)

マイクロソフトが提供するクラウドベースの統合ツールであり、ソースコード管理（GitおよびTFVC）、レポーティング、要求管理、プロジェクトマネジメント、自動ビルド、テスト・リリースマネジメントなどの機能を提供します。小規模チーム向けのエディションは最大5ユーザーまで無料で利用でき、それ以上のユーザーはライセンスを購入することで使用できます。関係者ユーザー（ワークアイテムやカンバンなどの管理・利用のみできる限定ユーザー）やVisual Studio契約者は特典としてサービスへの無償アクセスが可能です。

2013年11月13日にマイクロソフトは、Microsoft Azureプラットフォーム上でVisual StudioのSaaS形態での提供を発表しました。当時は「Team Foundation Services」や「Visual Studio Online」と呼ばれていましたが、Team Foundation Serverをローリングリリースモデルでインターネット上で利用できるよう実装したものでした。ユーザーはAzureポータルを使用して「Visual Studio Online」を利用でき、Git互換のバージョン管理システム、負荷テストサービス、テレメトリサービス、コードネーム「Monaco」のブラウザ内コードエディタを使用することができました。2015年11月18日の開発者向けイベントConnect(); 2015で、マイクロソフトはこのサービスのブランド名を「Visual Studio Team Services (VSTS) 」に変更することを発表しました。その後、2018年9月10日に、Visual Studio Team Servicesは「Azure DevOps Services」へと名称が変更されました。

Team Foundation Server Express

無料版でありながらTFSの主要機能はそのまま利用できる一方、5人以下でのみ利用可能（有償での追加は可能）、シングルサーバー限定、SQL Server Expressのみ対応、TFS Proxyのサポートなし、SharePoint統合利用不可といった制限事項がある「Team Foundation Server Express」は、以下のバージョンで提供されました。

Team Foundation Server Express 2012
Team Foundation Server Express 2013
Team Foundation Server Express 2015
Team Foundation Server 2018 Express


(2017はスキップされました。)

関連項目

バージョン管理システム
バージョン管理システムの一覧
Azure DevOps Server
Visual Studio Team System
Visual Studio Application Lifecycle Management

脚注

外部リンク

コードを共有する。作業を追跡する。ソフトウェアを出荷する。 | Team Foundation Server - Visual Studio
計画、共同でコーディング、すばやく出荷 | Visual Studio Team Services - Visual Studio
Visual Studio IDE、コード エディター、Azure DevOps、App Center - Visual Studio

もう一度検索