Tears cyclone -醒-

KOTOKO 『tears cyclone -醒-』

2019年6月26日、NBCユニバーサルからリリースされた『tears cyclone -醒-』は、シンガーソングライターKOTOKOにとって通算8枚目にあたるオリジナルフルアルバムです。

本作は、KOTOKOのメジャーデビュー15周年を記念して企画された連続リリースの第二弾であり、前作『tears cyclone -廻-』から約1年ぶりに発表されたコンセプトアルバム『tears cyclone』の完結編として位置づけられています。物語が巡り再び始まることを意味する「廻」に対し、「醒」という言葉はまさにプロジェクトのクライマックスと、そこから派生する新たな展開を示唆しています。

このアルバムの大きな特徴の一つは、かつてKOTOKOのサウンドを初期から支え、数々の名曲を生み出してきた音楽制作プロダクションI'veに所属していたコンポーザー、中沢伴行氏との完全コラボレーション作品であるという点です。すべての楽曲において中沢氏が作曲・編曲を手掛けており、これによりKOTOKOのボーカル表現と中沢氏特有のサウンドプロダクションが見事に融合。ファンにとっては、I've時代のタッグを彷彿とさせつつも、15年のキャリアを経て円熟味を増した二人の化学反応を楽しむことができる特別な作品となっています。

アルバムタイトルに掲げられた「醒（せい）」という言葉には、「覚醒」という意味が込められています。KOTOKO自身は、このタイトルを冠したことについて、まさに「覚醒してやる！」という強い気持ちを持って制作に臨んだと語っています。彼女は、「出し惜しみせず、やってみたいことを全てやる」「やりたいこと全部やろう、全部挑戦しよう」という意気込みで楽曲制作に挑んだ結果、結果的に多様なサウンドや表現が集まったとしても構わない、という気持ちで取り組んだそうです。この言葉からは、15周年という節目にあたり、これまでの活動で培ったものに加え、アーティストとしてさらなる進化を目指すKOTOKOの強い意志と、リスナーを驚かせるような新たな一面を見せたいというサービス精神が感じられます。

アルバムを彩る楽曲群は、中沢伴行氏の手による多彩なサウンドプロダクションが特徴です。アルバムの表題曲でもある「醒 -metallic tears-」は、本作のコンセプトを象徴する代表的な楽曲であり、その世界観を表現したミュージックビデオのショートバージョンが公式Youtubeチャンネルにて公開され、アルバムへの期待感を高めました。また、KOTOKOが作詞家として川田まみ氏に提供し、テレビアニメ「おねがいツインズ」のエンディングテーマとして知られる名曲「明日への涙」を、本作のために「-timeless tear mix-」としてセルフカバーして収録。長年のファンにとっては感慨深い一曲であり、セルフカバーによってKOTOKO自身の歌声で新たな息吹が吹き込まれています。さらに、初期のヒットシングル「Re-Sublimity」のカップリング曲でありながら隠れた人気を誇る「agony」も、「-Dark of Crystal arrange-」として現代的なサウンドにリアレンジされて収録されています。これらの楽曲は、過去の自身の作品と向き合い、それを現在進行形の表現として再構築しようとするKOTOKOのクリエイティブな姿勢を示しています。

初回限定盤には、ファンにとって嬉しい特典が同梱されました。2018年9月30日に渋谷TSUTAYA O-EASTで開催された『KOTOKO LIVE TOUR 2018 "tears cyclone -廻-"』のライブ映像が収録されたBlu-rayディスクです。前作『tears cyclone -廻-』の世界観をライブパフォーマンスで体感できる貴重な映像特典であり、アルバム本編と合わせて楽しむことで、『tears cyclone』という一連のプロジェクトをより深く理解することができます。

商業的な側面としては、2019年7月8日付のオリコン週間アルバムチャートにおいて、初登場で26位を記録しました。初動売上は2,853枚でした。

『tears cyclone -醒-』は、KOTOKOのメジャーデビュー15周年という節目を飾る2部作の締めくくりとして、そしてI've時代の盟友である中沢伴行氏との再タッグによる「覚醒」をテーマにした意欲作です。過去へのリスペクトと未来への挑戦が融合したこのアルバムは、KOTOKOのアーティストとしての深みと広がりを示す一作と言えるでしょう。

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