Tetrahedron (雑誌)

Tetrahedron：有機化学分野をリードする学術誌

Tetrahedronは、有機化学の専門家が執筆する週刊の学術雑誌です。エルゼビア社によって発行されており、その高い学術的価値から、世界中の研究者から広く読まれています。雑誌名はギリシャ語で四面体を意味するTetrahedronに由来し、これは飽和炭素原子の結合構造を象徴しています。

Tetrahedronの大きな特徴の一つに、その高いインパクトファクターが挙げられます。2014年には2.641という高いインパクトファクターを記録しており、有機化学分野における影響力の大きさを示しています。これは、掲載論文の質の高さと、それらが他の研究者によって頻繁に引用されていることを意味します。

さらに、Tetrahedronとエルゼビア社は毎年シンポジウムを開催し、世界中の研究者たちが集い、最新の研究成果を発表し、活発な意見交換を行う場を提供しています。このシンポジウムは、有機化学分野における研究交流の中心的役割を果たしています。

影響力の大きな掲載論文

Tetrahedronには、有機化学の発展に多大な貢献をした数々の論文が掲載されています。Web of Scienceによると、2013年6月22日時点で、1000回以上引用された論文が10報、そして2000回以上引用された論文が4報もあります。これらの論文は、それぞれ有機化学における重要な概念や手法を提示し、後続の研究に大きな影響を与えてきました。

特に注目すべき論文として、以下の4報が挙げられます。

Wiberg, K. B. (1968). “Application of pople-santry-segal CNDO method to the cyclopropylcarbinyl and cyclobutyl cation and to bicyclobutane”. Tetrahedron 24 (3): 1083. - 2228回引用
この論文では、計算化学の手法を用いて、シクロプロピルカルビニルカチオン、シクロブチルカチオン、およびビシクロブタンの構造と性質を解明しました。この研究は、計算化学を有機化学に応用する上で重要な先駆的研究となりました。

Haasnoot, C. A. G.; de Leeuw, F. A. A. M.; Altona, C. (1980). “The relationship between proton-proton NMR coupling constants and substituent electronegativities—I: An empirical generalization of the Karplus equation”. Tetrahedron 36 (19): 2783–2792. - 2162回引用
この論文では、プロトン‐プロトンNMRカップリング定数と置換基の電気陰性度との関係を明らかにし、Karplus式を経験的に一般化しました。この研究成果は、NMR分光法を用いた構造解析において広く利用されています。

Grubbs, R. H.; Chang, S. (1998). “Recent advances in olefin metathesis and its application in organic synthesis”. Tetrahedron 54 (18): 4413–4450. - 2124回引用
オレフィンメタセシス反応とその有機合成への応用に関する最新の進歩について解説した論文です。オレフィンメタセシスは、炭素-炭素二重結合を形成する重要な反応であり、この論文は、この反応の理解と応用を大きく進展させました。

Gasteiger, J.; Marsili, M. (1980). “Iterative partial equalization of orbital electronegativity - A rapid access to atomic charges”. Tetrahedron 36 (22): 3219–3228. - 2107回引用
この論文では、原子電荷を迅速に計算する方法として、軌道電気陰性度の反復的部分等化法を提案しました。この方法は、計算化学において広く利用されており、分子の性質を予測する上で重要な役割を果たしています。

これらの論文は、Tetrahedronが有機化学分野の発展にいかに貢献してきたかを示す重要な例です。

関連雑誌と賞

Tetrahedronには、姉妹誌としてTetrahedron Lettersや、不斉合成を扱うTetrahedron: Asymmetryがありました。Tetrahedron: Asymmetryは2017年12月にTetrahedronおよびTetrahedron Lettersに吸収され、廃刊となりました。また、有機化学分野における優れた研究業績を表彰するテトラヘドロン賞も存在します。

Tetrahedronは、今後も有機化学分野の最先端研究を世界に発信し続ける、重要な学術雑誌としてその地位を確立し続けるでしょう。

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